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大江の魚

一  大河は大陸の動脈である。  支那大陸を生かしている二つの大動脈は、いうまでもなく、北方の黄河と、南方の揚子江とである。  呉は、大江の流れに沿うて、「江東の地」と称われている。  ここに、呉の長沙の太守孫堅の遺子孫...

三国志 本文 草莽の巻
7ヶ月 ago
冬葉啾々

一  魏の大軍が呉へ押襲せてくるとの飛報は、噂だけにとどまった。  嘘でもなかったが、早耳の誤報だったのである。  この冬を期して、曹操が宿望の呉国討伐を果たそうとしたのは事実で、すでに南下の大部隊を編制し、各部の諸大将の任...

本文 三国志 遠南の巻
7ヶ月 ago
蜀呉修交

一  要するに、陸遜の献策は。  一つには魏の求めに逆らわず、二つには蜀との宿怨を結ばず、三つにはいよいよ自軍の内容を充実して形勢のよきに従う。  ということであった。  呉の方針は、それを旨として、以後、軍は進めて、あ...

出師の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
溯巻く黄河

一  槍の先に、何やら白い布をくくりつけ、それを振りながらまっしぐらに駈けてくる敵将を見、曹操の兵は、 「待てっ、何者だ」と、たちまち捕えて、姓名や目的を詰問した。 「わしは、曹丞相の旧友だ。南陽の許攸といえば、きっと覚えて...

孔明の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
鹿と魏太子

一  孔明還る、丞相還る。  成都の上下は、沸き返るような歓呼だった。後主劉禅にも、その日、鸞駕に召されて、宮門三十里の外まで、孔明と三軍を迎えに出られた。  帝の鸞駕を拝すや、孔明は車から跳びおりて、 「畏れ多い」と、...

出師の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
御林の火

一  街は戸ごとに燈火をつらね、諸門の陣々も篝に染まり、人の寄るところ、家のあるところ、五彩の燈にいろどられているため、こよい正月十五日の夜、天上一輪の月は、なおさら美しく見えた。  王必の営中では、宵の口から酒宴がひらかれ、将...

本文 三国志 遠南の巻
7ヶ月 ago
牛と「いなご」

一  穴を出ない虎は狩れない。  曹操は、あらゆる策をめぐらして、呂布へ挑んだが、 「もうその策には乗らない」と、彼は容易に、濮陽から出なかった。  そのくせ、前線と前線との、偵察兵や小部隊は日々夜々小ぜりあいをくり返し...

群星の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
増長冠

一  下邳は徐州から東方の山地で、寄手第六軍の大将韓暹は、ここから徐州へ通じる道を抑え、司令部を山中の嘯松寺において、総攻撃の日を待っている。  もちろん、街道の交通は止まっている。野にも部落にも兵が満ちていた。  ――けれ...

本文 草莽の巻 三国志
7ヶ月 ago
具眼の士

一  多年軍需相として、重要な内政の一面に才腕をふるっていた李厳の退職は、何といっても、蜀軍の一時的休養と、延いては国内諸部面の大刷新を促さずにはおかなかった。  蜀道の嶮岨は、事実、誰がその責任者に当っても、克服することのでき...

五丈原の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
亡流

一  渦まく水、山のような怒濤、そして岸うつ飛沫。この夜、白河の底に、溺れ死んだ人馬の数はどれ程か、その大量なこと、はかり知るべくもない。  堰を切り、流した水なので、水勢は一時的ではあった。しかしなお、余勢の激流は滔々と岸を洗...

本文 三国志 赤壁の巻
7ヶ月 ago
柑子と牡丹

一  呉に年々の貢ぎ物をちかわせて来たことは、遠征魏軍にとって、何はともあれ、赫々たる大戦果といえる。まして、漢中の地が、新たに魏の版図に加えられたので、都府の百官は、曹操を尊んで、「魏王の位に即いていただこうじゃないか」と、寄々、...

本文 三国志 遠南の巻
7ヶ月 ago
私情を斬る

一  漢中王の劉玄徳は、この春、建安二十五年をもって、ちょうど六十歳になった。魏の曹操より六ツ年下であった。  その曹操の死は、早くも成都に聞え、多年の好敵手を失った玄徳の胸中には、一抹落莫の感なきを得なかったろう。敵ながら惜し...

出師の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
祁山の野

一  蜀軍の武威は大いに振った。行くところ敵なきその形容はまさに、原書三国志の記述に髣髴たるものがうかがわれる。 ――蜀ノ建興五年冬、孔明スデニ天水、南安、安定ノ三郡ヲ攻取リ、ソノ威、遠近ヲ靡カセ、大軍スデニ祁山ニ出デ、渭水ノ西ニ...

五丈原の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
呉の情熱

一  眼を転じて、南方を見よう。  呉は、その後、どういう推移と発展をとげていたろうか。  ここ数年を見較べるに――  曹操は、北方攻略という大事業をなしとげている。  玄徳のほうは、それに反して、逆境また逆境だった...

本文 三国志 赤壁の巻
7ヶ月 ago
競う南風

一  さて。――日も経て。  曹操はようやく父のいる郷土まで行き着いた。  そこは河南の陳留(開封の東南)と呼ぶ地方である。沃土は広く豊饒であった。南方の文化は北部の重厚とちがって進取的であり、人は敏活で機智の眼がするどく働...

群星の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
不戦不和

一  どうも煮えきらない玄徳の命令である。争気満々たる張飛には、それがもの足らなかった。 「劉岱が虎牢関でよく戦ったことぐらいは、此方とても存じておる。さればとて、何程のことがあろう。即刻、馳せ向って、この張飛が、彼奴をひッ掴ん...

臣道の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
秘勅を縫う

一  禁苑の禽は啼いても、帝はお笑いにならない。  簾前に花は咲いても、帝のお唇は憂いをとじて語ろうともせぬ。  きょうも終日、帝は、禁中のご座所に、物思わしく暮しておわした。  三名の侍女が夕べの燭を点じて去る。 ...

臣道の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
大権転々

一  西涼(甘粛省・蘭州)の地方におびただしい敗兵が流れこんだ。  郿塢の城から敗走した大軍だった。  董卓の旧臣で、その四大将といわれる李傕、張済、郭汜、樊稠などは、連名して、使者を長安に上せ、 「伏して、赦を乞う」 ...

群星の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
洛陽落日賦

一  味方の大捷に、曹操をはじめ、十八ヵ国の諸侯は本陣に雲集して、よろこびを動揺めかせていた。  そのうちに、討取った敵の首級何万を検し大坑へ葬った。 「この何万の首のうちに、一つの呂布の首がないのだけは、遺憾だな」  ...

群星の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
太医吉平

一  そのむかし、まだ洛陽の一皇宮警吏にすぎなかった頃、曹操という白面の青年から、おれの将来を卜してくれといわれて、 「おまえは治世の能臣だが、また乱世の奸雄だ」  と予言したのは、洛陽の名士許子将という人相観だった。 ...

臣道の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
傾国

一  王允は、一家を挙げて、彼のためにもてなした。  善美の饗膳を前に、呂布は、手に玉杯をあげながら主人へ云った。 「自分は、董太師に仕える一将にすぎない。あなたは朝廷の大臣で、しかも名望ある家の主人だ。一体、なんでこんなに...

群星の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
雷怯子

一  雨やどりの間の雑談にすぎないので巧みに答えをかわされたが、曹操は、腹も立てられなかった。  玄徳は、すこし先に歩いていたが、よいほどな所で、彼を待ち迎えて、 「まだ降りそうな雲ですが」 「雨もまた趣があっていい。雨...

臣道の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
舞刀飛首

一  百官の拝礼が終って、 「新帝万歳」の声が、喪の禁苑をゆるがすと共に、御林軍(近衛兵)を指揮する袁紹は、 「次には、陰謀の首魁蹇碩を血まつりにあげん」  と、剣を抜いて宣言した。  そしてみずから宮中を捜しまわっ...

本文 桃園の巻 三国志
7ヶ月 ago
西部第二戦線

一  当時、中国の人士が、西羗の夷族と呼びならわしていたのは、現今の青海省地方――いわゆる欧州と東洋との大陸的境界の脊梁をなす大高原地帯――の西蔵人種と蒙古民族との混合体よりなる一王国をさしていっていたものかと考えられる。  さ...

五丈原の巻 本文 三国志
7ヶ月 ago
文武競春

一  冀北の強国、袁紹が亡びてから今年九年目、人文すべて革まったが、秋去れば冬、冬去れば春、四季の風物だけは変らなかった。  そして今し、建安十五年の春。  鄴城(河北省)の銅雀台は、足かけ八年にわたる大工事の落成を告げてい...

本文 望蜀の巻 三国志
7ヶ月 ago