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立春大吉

一  年はついに暮れてしまった。  あくれば建安十三年。  新野の居城に、歳暮や歳旦を迎えているまも、一日とて孔明を思わぬ日のない玄徳は、立春の祭事がすむと、卜者に命じて吉日をえらばせ、三日の潔斎をして身をきよめた。  ...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
総兵之印

一  蜀魏両国の消耗をよろこんで、その大戦のいよいよ長くいよいよ酷烈になるのを希っていたのは、いうまでもなく呉であった。  この時に当って、呉王孫権は、宿年の野望をついに表面にした。すなわち彼もまた、魏や蜀にならって、皇帝を僭称...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
成都陥落

一  馬超は弱い。決して強いばかりの人間ではなかった。理に弱い。情にも弱い。  李恢はなお説いた。 「玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。こういう公明な主をえらぶに、何でうし...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago
死せる孔明、生ける仲達を走らす

一  一夜、司馬懿は、天文を観て、愕然とし、また歓喜してさけんだ。 「――孔明は死んだ!」  彼はすぐ左右の将にも、ふたりの息子にも、昂奮して語った。 「いま、北斗を見るに、大なる一星は、昏々と光をかくし、七星の座は崩れ...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
北斗七星旗

一  青貝の粉を刷いたような星は満天にまたたいていたが、十方の闇は果てなく広く、果てなく濃かった。陰々たる微風は面を撫で、夜気はひややかに骨に沁む。 「なるほど、妖気が吹いてくる――」  仲達は眸をこらして遠くを望み見ていた...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
建業会議

一  手術をおえて退がると、華陀はあらためて、次の日、関羽の容体を見舞いにきた。 「将軍。昨夜は如何でした」 「いや、ゆうべは熟睡した。今朝さめてみれば、痛みも忘れておる。御身は実に天下の名医だ」 「いや、てまえも随分今...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
諸葛氏一家

一  孔明の家、諸葛氏の子弟や一族は、のちに三国の蜀、呉、魏――それぞれの国にわかれて、おのおの重要な地位をしめ、また時代の一方をうごかしている関係上、ここでまず諸葛家の人々と、孔明そのものの為人を知っておくのも、決してむだではなか...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
竹冠の友

一  ここが大事だ! と龐統はひそかに警戒した。まんまと詐りおおせたと心をゆるしていると、案外、曹操はなお――間ぎわにいたるまで、こっちの肚を探ろうとしているかも知れない――と気づいたからである。  で、彼は、曹操が、 (成...

本文 三国志 赤壁の巻
約2ヶ月 ago
馬謖を斬る

一  長安に還ると、司馬懿は、帝曹叡にまみえて、直ちに奏した。 「隴西諸郡の敵はことごとく掃討しましたが、蜀の兵馬はなお漢中に留っています。必ずしもこれで魏の安泰が確保されたものとはいえません。故にもし臣をして、さらにそれを期せ...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
国葬

一  呉侯は、呂蒙の死に、万斛の涙をそそいで、爵を贈り、棺槨をそなえ、その大葬を手厚くとり行った後、 「建業から呂覇を呼べ」と、いいつけた。  呂覇は呂蒙の子である。やがて張昭に連れられて荊州へ来た。孫権は可憐な遺子をながめ...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
琴を弾く高士

一  澄み暮れてゆく夕空の無辺は、天地の大と悠久を思わせる。白い星、淡い夕月――玄徳は黙々と広い野をひとりさまよってゆく。 「ああ、自分も早、四十七歳となるのに、この孤影、いつまで無為飄々たるのか」  ふと、駒を止めた。 ...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
木牛流馬

一 「それがしは、魏の部将鄭文という者です。丞相に謁してお願いしたいことがある」  ある日、蜀の陣へ来て、こういう者があった。  孔明が対面して、 「何事か」  と、質すと、鄭文は拝伏して、 「降参を容れていただ...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
魚紋

一  玄徳の死は、影響するところ大きかった。蜀帝崩ず、と聞えて、誰よりも歓んだのは、魏帝曹丕で、 「この機会に大軍を派せば、一鼓して成都も陥すことができるのではないか」  と虎視眈々、群臣に諮ったが、賈詡は、 「孔明がお...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
鬢糸の雪

一 「えっ、荊州が陥ちた?」  関平は戦う気も萎え、徐晃をすてて一散に引っ返した。混乱するあたまの中で、 「ほんとだろうか? まさか?」  と、わくわく思い迷った。  そして堰城近くまで駈けてくると、こはいかに城は濛...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
麦青む

一  孔明は成都に還ると、すぐ参内して、天機を奉伺し、帝劉禅へこう奏した。 「いったい如何なる大事が出来て、かくにわかに、臣をお召し還し遊ばされましたか」  もとより何の根拠もないことなので、帝はただうつ向いておられたが、や...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
女衣巾幗

一  誰か知ろう真の兵家が大機を逸した胸底のうらみを。  人はみな、蜀軍の表面の勝ちを、あくまで大勝とよろこんでいたが、独り孔明の胸には、遺憾やるかたないものがつつまれていた。  加うるに、彼が、ひとまず自軍を渭南の陣にまと...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
高楼弾琴

一  魏の大陣容はととのった。  辛毘、あざなは佐治、これは潁州陽翟の生れ、大才の聞え夙にたかく、いまや魏主曹叡の軍師として、つねに帝座まぢかく奉侍している。  孫礼、字は徳達は、護軍の大将として早くより戦場にある曹真の大軍...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago

一  魏の総勢が遠く退いた後、孔明は八部の大軍をわけて箕谷と斜谷の両道からすすませ、四度祁山へ出て戦列を布かんと云った。 「長安へ出る道はほかにも幾条もあるのに、丞相には、なぜいつもきまって、祁山へ進み出られるのですか」  ...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
酔県令

一  ここしばらく、孔明は荊州にいなかった。新領治下の民情を視、四郡の産物など視察して歩いていた。  彼の留守である。龐統が荊州へ来たのは。 「予に会いたいというのか」 「おそらく仕官を求めにきたものと思われますが」 ...

本文 望蜀の巻 三国志
約2ヶ月 ago
銀河の祷り

一  彼の病気はあきらかに過労であった。それだけに、どっと打臥すほどなこともない。  むしろ病めば病むほど、傍人の案じるのをも押して、軍務に精励してやまない彼であった。近頃聞くに、敵の軍中には、また気負うこと旺なる将士が、大いに...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
八陣展開

一  魏は渭水を前に。蜀は祁山をうしろに。――対陣のまま秋に入った。 「曹真の病は重態とみえる……」  一日、孔明は敵のほうをながめて呟いた。  斜谷から敗退以後、魏の大都督曹真が病に籠るとの風説はかねて伝わっていたが、...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
洛陽に生色還る

一  司馬懿仲達軍のこのときの行軍は、二日行程の道のりを一日に進んで行ったというから、何にしても非常に迅速なものだったにちがいない。  しかも仲達は、これに先だって、参軍の梁畿という者に命じ、数多の第五部隊を用いて、新城付近へ潜...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
鹿と魏太子

一  孔明還る、丞相還る。  成都の上下は、沸き返るような歓呼だった。後主劉禅にも、その日、鸞駕に召されて、宮門三十里の外まで、孔明と三軍を迎えに出られた。  帝の鸞駕を拝すや、孔明は車から跳びおりて、 「畏れ多い」と、...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
孔明を訪う

一  徐庶に別れて後、玄徳は一時、なんとなく空虚だった。  茫然と、幾日かを過したが、 「そうだ。孔明。――彼が別れる際に云いのこした孔明を訪ねてみよう」  と、側臣を集めて、急に、そのことについて、人々の意見を徴してい...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago

一  この時の会戦では、司馬懿は全く一敗地にまみれ去ったものといえる。魏軍の損害もまたおびただしい。以来、渭水の陣営は、内に深く守って、ふたたび鳴りをひそめてしまった。  孔明は、拠るところの祁山へ兵を収めたが、勝ち軍に驕るなか...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago