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油情燈心

一 「ああ危なかった」  虎口をのがれたような心地を抱えて、董承はわが邸へいそいだ。  帰るとすぐ、彼は一室に閉じこもって、御衣と玉帯をあらためてみた。 「はてな。何物もないが?」  なお、御衣を振い、玉帯の裏表を調...

臣道の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
馬騰と一族

一  龐統はその日から、副軍師中郎将に任ぜられた。  総軍の司令を兼ね、最高参謀府にあって、軍師孔明の片腕にもなるべき重職についたわけである。  建安十六年の初夏の頃。  魏の都へ向って、早馬を飛ばした細作(諜報員)は、...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
月烏賦

一  都門をさること幾千里。曹操の胸には、たえず留守の都を憶う不安があった。  西涼の馬超、韓遂の徒が、虚をついて、蜂起したと聞いたせつな、彼は一も二もなく 「たれか予に代って、許都へ帰り、都府を守る者はないか。風聞はまだ風...

本文 三国志 赤壁の巻
8ヶ月 ago
敵中作敵

一  韓遂の幕舎へ、ふいに、曹操の使いが来た。 「はて。何か?」  使いのもたらした書面をひらいてみると曹操の直筆にちがいなく、こうしたためてある。 君ト予トハ元ヨリ仇デハナク、君ノ厳父ハ、予ノ先輩デアリ、長ジテハ、君ト知...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
出師の表

一  馬謖は云った。 「なぜか、司馬懿仲達という者は、あの才略を抱いて、久しく魏に仕えながら、魏では重く用いられていません。彼が曹操に侍いて、その図書寮に勤めていたのは、弱冠二十歳前後のことだと聞いています。曹操、曹丕、曹叡、三...

出師の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
小児病患者

一  粛正の嵐、血の清掃もひとまず済んだ。腥風都下を払って、ほっとしたのは、曹操よりも、民衆であったろう。  曹操は、何事もなかったような顔をしている。かれの胸には、もう昨日の苦味も酸味もない。明日への百計にふけるばかりだった。...

臣道の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
兵学談義

一  戒めなければならないのは味方同士の猜疑である。味方の中に知らず知らず敵を作ってしまう心なき業である。  が、その反間苦肉をほどこした曹操のほうからみれば、いまや彼の軍は、西涼の馬超軍に対して、完全なる、  敵中作敵 ...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
中原を指して

一  蜀の大軍は、沔陽(陝西省・沔県、漢中の西)まで進んで出た。ここまで来た時、 「魏は関西の精兵を以て、長安(陝西省・西安)に布陣し、大本営をそこにおいた」  という情報が的確になった。  いわゆる天下の嶮、蜀の桟道を...

五丈原の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
不倶戴天

一  このとき丞相府には、荊州方面から重大な情報が入っていた。 「荊州の玄徳は、いよいよ蜀に攻め入りそうです。目下、彼の地では活溌な準備が公然と行われている」  曹操はかく聞いて胸をいためた。もし玄徳が蜀に入ったら、淵の龍が...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
竹冠の友

一  ここが大事だ! と龐統はひそかに警戒した。まんまと詐りおおせたと心をゆるしていると、案外、曹操はなお――間ぎわにいたるまで、こっちの肚を探ろうとしているかも知れない――と気づいたからである。  で、彼は、曹操が、 (成...

本文 三国志 赤壁の巻
8ヶ月 ago
渭水を挟んで

一  曹操の本軍と、西涼の大兵とは、次の日、潼関の東方で、堂々対戦した。  曹軍は、三軍団にわかれ、曹操はその中央にあった。  彼が馬をすすめると、右翼の夏侯淵、左翼の曹仁は、共に早鉦を打ち鼓を鳴らして、その威風にさらに気勢...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
馬超と張飛

一  彗星のごとく現われて彗星のようにかき失せた馬超は、そも、どこへ落ちて行ったろうか。  ともあれ、隴西の州郡は、ほっとしてもとの治安をとりもどした。  夏侯淵は、その治安の任を、姜叙に託すとともに、 「君はこのたびの...

本文 三国志 遠南の巻
8ヶ月 ago
生きて出る柩

一  樊城は包囲された。弱敵に囲まれたのとちがい、名だたる関羽とその精鋭な軍に包囲されたのであるから、落城の運命は、当然に迫った。 (――急遽、来援を乞う)  との早馬は、魏王宮中を大いに憂えさせた。曹操は評議の席にのぞむと...

本文 三国志 遠南の巻
8ヶ月 ago
破瓶

一  最後の一計もむなしく半途に終って、それ以来、呂布は城にあって、日夜悶々と、酒ばかりのんでいたが、――その呂布を攻め、城を取囲んでいる曹操のほうにも、すでに安からぬ思いが濃かった。 「この城を囲んでからも六十余日になる。しか...

臣道の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
漢中併呑

一 (――急に、魏公が、あなたと夏侯惇のおふたりに内々密議を諮りたいとのお旨である。すぐ府堂までお越しありたい)  賈詡からこういう手紙が来た。使いをうけたのは、曹操の一族、曹仁である。 「なんだろう?」  曹仁は、洛中...

本文 三国志 遠南の巻
8ヶ月 ago
魚紋

一  玄徳の死は、影響するところ大きかった。蜀帝崩ず、と聞えて、誰よりも歓んだのは、魏帝曹丕で、 「この機会に大軍を派せば、一鼓して成都も陥すことができるのではないか」  と虎視眈々、群臣に諮ったが、賈詡は、 「孔明がお...

出師の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
鹿と魏太子

一  孔明還る、丞相還る。  成都の上下は、沸き返るような歓呼だった。後主劉禅にも、その日、鸞駕に召されて、宮門三十里の外まで、孔明と三軍を迎えに出られた。  帝の鸞駕を拝すや、孔明は車から跳びおりて、 「畏れ多い」と、...

出師の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
火水木金土

一  渭水は大河だが、水は浅く、流れは無数にわかれ、河原が多く、瀬は早い。  所によって、深い淵もあるが、浅瀬は馬でも渡れるし、徒渉もできる。  ここを挟んで、曹操は、北の平野に、野陣を布いて、西涼軍と対していたが、夜襲朝討...

本文 望蜀の巻 三国志
8ヶ月 ago
西涼ふたたび燃ゆ

一  忽然と、蒙古高原にあらわれて、胡夷の猛兵をしたがえ、隴西(甘粛省)の州郡をたちまち伐り奪って、日に日に旗を増している一軍があった。  建安十八年の秋八月である。この蒙古軍の大将は、さきに曹操に破られて、どこへか落ちて行った...

本文 三国志 遠南の巻
8ヶ月 ago
蛍の彷徨い

一  何進の幕将で中軍の校尉袁紹は、何進の首を抱いて、 「おのれ」と、青鎖門を睨んだ。  同じ何進の部下、呉匡も、 「おぼえていろ」と、怒髪を逆だて、宮門に火を放つと五百の精兵を駆って、なだれこんだ。 「十常侍をみな...

本文 桃園の巻 三国志
8ヶ月 ago
競う南風

一  さて。――日も経て。  曹操はようやく父のいる郷土まで行き着いた。  そこは河南の陳留(開封の東南)と呼ぶ地方である。沃土は広く豊饒であった。南方の文化は北部の重厚とちがって進取的であり、人は敏活で機智の眼がするどく働...

群星の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
大権転々

一  西涼(甘粛省・蘭州)の地方におびただしい敗兵が流れこんだ。  郿塢の城から敗走した大軍だった。  董卓の旧臣で、その四大将といわれる李傕、張済、郭汜、樊稠などは、連名して、使者を長安に上せ、 「伏して、赦を乞う」 ...

群星の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
老将の功

一  郭淮の進言に面目をとどめた張郃は、この一戦にすべての汚名を払拭せんものと、意気も新たに、五千余騎を従えて、葭萌関に馬を進めた。  この関を守るは、蜀の孟達、霍峻の両大将であった。  張郃軍あらためて攻めきたるの報を得て...

本文 三国志 遠南の巻
8ヶ月 ago
太医吉平

一  そのむかし、まだ洛陽の一皇宮警吏にすぎなかった頃、曹操という白面の青年から、おれの将来を卜してくれといわれて、 「おまえは治世の能臣だが、また乱世の奸雄だ」  と予言したのは、洛陽の名士許子将という人相観だった。 ...

臣道の巻 本文 三国志
8ヶ月 ago
巫女

一 「なに、無条件で和睦せよと。ばかをいい給え」  郭汜は、耳もかさない。  それのみか、不意に、兵に令を下して、楊彪について来た大臣以下宮人など、六十余人の者を一からげに縛ってしまった。 「これは乱暴だ。和議の媒介に参...

本文 草莽の巻 三国志
8ヶ月 ago