一 桃園へ行ってみると、関羽と張飛のふたりは、近所の男を雇ってきて、園内の中央に、もう祭壇を作っていた。 壇の四方には、笹竹を建て、清縄をめぐらして金紙銀箋の華をつらね、土製の白馬を贄にして天を祭り、烏牛を屠ったことにして、...
一 魏ではこのところ、ふたりの重臣を相次いで失った。大司馬曹仁と謀士賈詡の病死である。いずれも大きな国家的損失であった。 「呉が蜀と同盟を結びました」 折も折、侍中辛毘からこう聞かされたとき、皇帝曹丕は、 「まちがい...
一 どうも煮えきらない玄徳の命令である。争気満々たる張飛には、それがもの足らなかった。 「劉岱が虎牢関でよく戦ったことぐらいは、此方とても存じておる。さればとて、何程のことがあろう。即刻、馳せ向って、この張飛が、彼奴をひッ掴ん...
一 年明けて、建安三年。 曹操もはや四十を幾つかこえ、威容人品ふたつながら備わって、覇気熱情も日頃は温雅典麗な貴人の風につつまれている。時には閑を愛して独り書を読み、詩作にふけり、終日、春闌の室を出ることもなかった。また或る...
一 白馬は疎林の細道を西北へ向ってまっしぐらに駆けて行った。秋風に舞う木の葉は、鞍上の劉備と芙蓉の影を、征箭のようにかすめた。 やがて曠い野に出た。 野に出ても、二人の身をなお、箭うなりがかすめた。今度のは木の葉のそれ...
一 孫権にとって甥の孫韶は義理ある兄の子でありまた兄の家、愈氏の相続人であった。だから彼が死罪になれば、兄の家が絶えることにもなる。 身は呉王の位置にあっても、軍律の重きことばかりは、如何ともし難いので、孫権はそんな事情まで...
一 張飛は、不平でたまらなかった。――呂布が帰るに際して、玄徳が自身、城門外まで送りに出た姿を見かけたので、なおさらのこと、 「ごていねいにも程がある」と、業腹が煮えてきたのであった。 「家兄。お人よしも、度が過ぎると、馬...