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死せる孔明、生ける仲達を走らす

一  一夜、司馬懿は、天文を観て、愕然とし、また歓喜してさけんだ。 「――孔明は死んだ!」  彼はすぐ左右の将にも、ふたりの息子にも、昂奮して語った。 「いま、北斗を見るに、大なる一星は、昏々と光をかくし、七星の座は崩れ...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
北斗七星旗

一  青貝の粉を刷いたような星は満天にまたたいていたが、十方の闇は果てなく広く、果てなく濃かった。陰々たる微風は面を撫で、夜気はひややかに骨に沁む。 「なるほど、妖気が吹いてくる――」  仲達は眸をこらして遠くを望み見ていた...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
不倶戴天

一  このとき丞相府には、荊州方面から重大な情報が入っていた。 「荊州の玄徳は、いよいよ蜀に攻め入りそうです。目下、彼の地では活溌な準備が公然と行われている」  曹操はかく聞いて胸をいためた。もし玄徳が蜀に入ったら、淵の龍が...

本文 望蜀の巻 三国志
5日 ago
白羽扇

一  荊州、襄陽、南郡三ヵ所の城を一挙に収めて、一躍、持たぬ国から持てる国へと、その面目を一新しかけてきた機運を迎えて、玄徳は、 「ここでよい気になってはならぬ――」と、大いに自分を慎んだ。 「亮先生」 「何ですか」 ...

本文 望蜀の巻 三国志
5日 ago
南方指掌図

一  益州の平定によって、蜀蛮の境をみだしていた諸郡の不良太守も、ここにまったくその跡を絶った。  従って、孔明の来るまで、叛賊の中に孤立していた永昌郡の囲みも、自ら解けて、太守王伉は、 「冬将軍が去って、久しぶりに春の天日...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
戦車と地雷

一  この日は、藤甲兵の全軍に、兀突骨もみずから指揮に立って、江を渡ってきた。  蜀兵は、抗戦に努めると見せかけながら、次第に崩れ立ち、やがて算をみだして、旗、得物、盔を打ち捨て、われがちに退却した。  そして、一竿の白旗が...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
諸葛氏一家

一  孔明の家、諸葛氏の子弟や一族は、のちに三国の蜀、呉、魏――それぞれの国にわかれて、おのおの重要な地位をしめ、また時代の一方をうごかしている関係上、ここでまず諸葛家の人々と、孔明そのものの為人を知っておくのも、決してむだではなか...

孔明の巻 本文 三国志
5日 ago
絶妙好辞

一  思いがけぬ孔明の言葉に、老将黄忠の忿懣はやるかたなく、色をなして孔明に迫るのだった。 「昔、廉頗は年八十に及んで、なお米一斗、肉十斤を食い、天下の諸侯、これをおそれ、あえて趙の国境を犯さなかったといいます。まして私は、未だ...

本文 三国志 遠南の巻
5日 ago
馬謖を斬る

一  長安に還ると、司馬懿は、帝曹叡にまみえて、直ちに奏した。 「隴西諸郡の敵はことごとく掃討しましたが、蜀の兵馬はなお漢中に留っています。必ずしもこれで魏の安泰が確保されたものとはいえません。故にもし臣をして、さらにそれを期せ...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
陣中戯言なし

一  その後すぐ呉の諜報機関は、蔡瑁、張允の二将が曹操に殺されて、敵の水軍司令部は、すっかり首脳部を入れ替えたという事実を知った。  周瑜は、それを聞いて、 「どうだ、おれの計略は、名人が弓を引いて、翊ける鳥を射的てたように...

本文 三国志 赤壁の巻
5日 ago
桃園終春

一  斗酒を傾けてもなお飽かない張飛であった。こめかみの筋を太らせて、顔ばかりか眼の内まで朱くして、勅使に唾を飛ばして云った。 「いったい、朝廷の臣ばかりでなく、孔明なども実に腑抜けの旗頭だ。聞けば、孔明はこんど皇帝の補佐たる丞...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
周瑜・気死す

一  孔明の従えてきた荊州の舟手の兵は、みな商人に姿を変えていた。玄徳と夫人、また随員五百を各〻の舟に収容すると、たちまち、櫓櫂をあやつり、帆を揚げて、入江の湾口を離れた。 「やあ、その舟返せ」  呉の追手は、遅ればせに来て...

本文 望蜀の巻 三国志
5日 ago
国葬

一  呉侯は、呂蒙の死に、万斛の涙をそそいで、爵を贈り、棺槨をそなえ、その大葬を手厚くとり行った後、 「建業から呂覇を呼べ」と、いいつけた。  呂覇は呂蒙の子である。やがて張昭に連れられて荊州へ来た。孫権は可憐な遺子をながめ...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
毒泉

一  孟獲は自陣に帰った。だが数日はぼんやり考えこんでばかりいる。弟の孟優が、 「兄貴、とても孔明にはかなわないから、いっそ降参したらどうかね」  と意見すると、彼は俄然、魂が入ったようにくわっと眼をむいた。 「ばかをぬ...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
松に古今の色無し

一  旌旗色なく、人馬声なく、蜀山の羊腸たる道を哀々と行くものは、五丈原頭のうらみを霊車に駕して、空しく成都へ帰る蜀軍の列だった。 「ゆくてに煙が望まれる。……この山中に不審なことだ。誰か見てこい」  楊儀、姜維の両将は、物...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
木牛流馬

一 「それがしは、魏の部将鄭文という者です。丞相に謁してお願いしたいことがある」  ある日、蜀の陣へ来て、こういう者があった。  孔明が対面して、 「何事か」  と、質すと、鄭文は拝伏して、 「降参を容れていただ...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
白帝城

一  敵を誘うに、漫罵愚弄して彼の怒りを駆ろうとするのは、もう兵法として古すぎる。  で、蜀軍はわざと虚陣の油断を見せたり、弱兵を前に立てたり、日々工夫して、釣りだしを策してみたが、呉は土龍のように、依然として陣地から一歩も出て...

出師の巻 本文 三国志
5日 ago
馬超と張飛

一  彗星のごとく現われて彗星のようにかき失せた馬超は、そも、どこへ落ちて行ったろうか。  ともあれ、隴西の州郡は、ほっとしてもとの治安をとりもどした。  夏侯淵は、その治安の任を、姜叙に託すとともに、 「君はこのたびの...

本文 三国志 遠南の巻
5日 ago
母子草

一  于禁は四日目に帰ってきた。  そのあいだ曹操は落着かない容子に見えた。しきりに結果を待ちわびていたらしい。 「ただいま立ち帰りました。遠く追いついて、蔡夫人、劉琮ともに、かくの如く、首にして参りました」  于禁の報...

本文 三国志 赤壁の巻
5日 ago
上・中・下

一  葭萌関は四川と陝西の境にあって、ここは今、漢中の張魯軍と、蜀に代って蜀を守る玄徳の軍とが、対峙していた。  攻めるも難、防ぐも難。  両軍は悪戦苦闘のままたがいに譲らず、はや幾月かを過していた。 「曹操が呉へ攻め下...

本文 三国志 遠南の巻
5日 ago
二度祁山に出づ

一  漢中滞陣の一ヵ年のうちに、孔明は軍の機構からその整備や兵器にまで、大改善を加えていた。  たとえば突撃や速度の必要には、散騎隊武騎隊を新たに編制して、馬に練達した将校をその部に配属し、また従来、弩弓手として位置も活用も低か...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
美丈夫姜維

一  それよりも前に、天水郡の太守馬遵は、宿将重臣を集めて、隣郡の救援について、議するところがあった。  主記の梁虔がその時云った。 「夏侯駙馬は、魏の金枝玉葉。すぐ隣にありながら、南安の危急を救わなかったとあれば、後に必ず...

五丈原の巻 本文 三国志
5日 ago
出廬

一  十年語り合っても理解し得ない人と人もあるし、一夕の間に百年の知己となる人と人もある。  玄徳と孔明とは、お互いに、一見旧知のごとき情を抱いた。いわゆる意気相許したというものであろう。  孔明は、やがて云った。 「も...

本文 三国志 赤壁の巻
5日 ago
山谷笑う

一  八十余万と称えていた曹操の軍勢は、この一敗戦で、一夜に、三分の一以下になったという。  溺死した者、焼け死んだ者、矢にあたって斃れた者、また陸上でも、馬に踏まれ、槍に追われ、何しろ、山をなすばかりな死傷をおいて三江の要塞か...

本文 望蜀の巻 三国志
5日 ago
舌戦

一  長江千里、夜が明けても日が暮れても、江岸の風景は何の変化もない。水は黄色く、ただ滔々淙々と舷を洗う音のみ耳につく。  船は夜昼なく、呉の北端、柴桑郡をさして下っている。――その途中、魯粛はひそかにこう考えた。 「痩せて...

本文 三国志 赤壁の巻
5日 ago