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New Word落鳳坡
一 「あら、なつかしの文字」 玄徳は、孔明の書簡をひらくと、まずその墨の香、文字の姿に、眸を吸われてから、読み入った。 龐統はその側にいた。 側に人のいるのも忘れて、玄徳は繰り返し繰り返し、孔明の書簡に心をとられて...
破軍星
一 七夕の宵だった。 城内の街々は、紅燈青燈に彩られている。 荊州の城中でも、毎年の例なので、孔明は、主君玄徳の留守ながら、祭を営み、酒宴をもうけて、諸大将をなぐさめていた。 すると、夜も更けてきた頃、一つの大き...
孔明を呼ぶ
一 蜀を破ったこと疾風迅雷だったが、退くこともまた電馳奔来の迅さであった。で、勝ち驕っている呉の大将たちは、陸遜に向って、 「せっかく白帝城へ近づきながら石の擬兵や乱石の八陣を見て、急に退いてしまったのは、一体いかなるわけです...
一書生
一 程秉は逃げ帰るように急いで呉国へ引き揚げた。その結果、ふたたび建業城中の大会議となって、閣員以下、呉の諸将は、今さらの如く蜀の旺盛な戦意を再認識して、満堂の悽気、恐愕のわななき、おおうべくもなかった。 「諸員。何をか恐れる...
短髪壮士
一 奪取した二ヵ所の陣地に、黄忠と魏延の二軍を入れて、涪水の線を守らせ、玄徳はひとまず涪城へかえった。 折からまた、遠くへ行った細作が帰ってきて、蜀外の異変をもたらした。 「呉の孫権が、漢中の張魯へ、謀略の密使をさし向け...
遺孤を託す
一 この年四月頃から蜀帝玄徳は永安宮の客地に病んで、病状日々に篤かった。 「いまは何刻か?」 枕前の燭を剪っていた寝ずの宿直や典医が、 「お目ざめでいられますか。いまは三更でございます」と、奏した。 白々と耀き...
成都陥落
一 馬超は弱い。決して強いばかりの人間ではなかった。理に弱い。情にも弱い。 李恢はなお説いた。 「玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。こういう公明な主をえらぶに、何でうし...
白羽扇
一 荊州、襄陽、南郡三ヵ所の城を一挙に収めて、一躍、持たぬ国から持てる国へと、その面目を一新しかけてきた機運を迎えて、玄徳は、 「ここでよい気になってはならぬ――」と、大いに自分を慎んだ。 「亮先生」 「何ですか」 ...
南方指掌図
一 益州の平定によって、蜀蛮の境をみだしていた諸郡の不良太守も、ここにまったくその跡を絶った。 従って、孔明の来るまで、叛賊の中に孤立していた永昌郡の囲みも、自ら解けて、太守王伉は、 「冬将軍が去って、久しぶりに春の天日...
白帝城
一 敵を誘うに、漫罵愚弄して彼の怒りを駆ろうとするのは、もう兵法として古すぎる。 で、蜀軍はわざと虚陣の油断を見せたり、弱兵を前に立てたり、日々工夫して、釣りだしを策してみたが、呉は土龍のように、依然として陣地から一歩も出て...
高楼弾琴
一 魏の大陣容はととのった。 辛毘、あざなは佐治、これは潁州陽翟の生れ、大才の聞え夙にたかく、いまや魏主曹叡の軍師として、つねに帝座まぢかく奉侍している。 孫礼、字は徳達は、護軍の大将として早くより戦場にある曹真の大軍...
烽火台
一 瑾の使いは失敗に帰した。ほうほうの態で呉へ帰り、ありのままを孫権に復命した。 「推参なる長髯獣め。われに荊州を奪るの力なしと見くびったか」 孫権は、荊州攻略の大兵をうごかさんとして、その建業城の大閣に、群臣の参集を求...
骨を削る
一 まだ敵味方とも気づかないらしいが、樊城の完全占領も時の問題とされている一歩手前で、関羽軍の内部には、微妙な変化が起っていたのである。 魏の本国から急援として派した七軍を粉砕し、一方、樊城城下に迫ってその余命を全く制しなが...
成都鳴動
一 宮殿の廂をこえて、月の光は玄徳の膝の辺まで映している。妃は、燭が消えているのに気づいて、侍女を呼んで明りをつけさせながら、 「どうなさいましたか」 と、玄徳の側へ寄った。 「いや、几に倚って、独り書を読んでいたの...