一 旌旗色なく、人馬声なく、蜀山の羊腸たる道を哀々と行くものは、五丈原頭のうらみを霊車に駕して、空しく成都へ帰る蜀軍の列だった。 「ゆくてに煙が望まれる。……この山中に不審なことだ。誰か見てこい」 楊儀、姜維の両将は、物...