張紘

于吉仙人

　浙江一帯の沿海を持つばかりでなく、揚子江の流域と河口を扼し、気温は高く天産は豊饒で、いわゆる南方系の文化と北方系の文化との飽和によって、宛然たる呉国色をここに劃し、人の気風は軽敏で利に明るく、また進取的であった。　彗星的な風雲児、江東の小覇王孫策は、当年まだ二十七歳でしかないが、建安四年の冬には、廬江を攻略し、また黄祖、劉勲などを平げて恭順を誓わせ、予章の太守もまた彼の下風について降を乞うてくるなど――隆々たる勢いであった。　彼の臣、張紘は、いくたびか都へ上り、舟航して、呉と往来していた。...

孔明の巻 本文 三国志

名医

　この際、孫策は、 。「たかのしれた小城」 。　と、自身、前線へ立って、一もみに、突破しようとしたが、張紘にたしなめられた。「大将の一身は、三軍の生命です。もうあなたは、中軍にあって、天授のお姿を、自重していなければいけません」 。

本文 草莽の巻 三国志

大号令

「周提督のお着きです」と、堂前はるかな一門から高らかに報らせる声がした。　孫権は威儀を正して、彼の登階を待ちかまえていた。それに侍立する文武官の顔ぶれを見れば、左の列には張昭、顧雍、張紘、歩隲、諸葛瑾、虞翻、陳武、丁奉などの文官。――また右列には、程普、黄蓋、韓当、周泰、蒋欽、呂蒙、潘璋、陸遜などを始めとして、すべての武官、三十六将、各〻、衣冠剣佩をととのえて、 。「周都督が肚にすえてきた最後の断こそ、呉の運命を決するもの」 。

本文 三国志 赤壁の巻

大江の魚

」 。「野に隠れている二人の賢人さ。ひとりは張昭といい、ひとりは張紘という。だから江東の二張とも称ばれている」 。「そんな人物がいるのか」 。

本文 草莽の巻 三国志

日輪

　俄然、軍議は緊張を呈した。　ところへまた、内務吏から、 。「重臣の張紘、先頃から病中にありましたが、今朝、息をひきとるにあたり、遺言の一書を、わが君へと、認め終って果てました」 。「なに、張紘が死んだ」 。　折も折である。

本文 三国志 遠南の巻

酔計二花

それまで登城をのばして待っているから」 。　周瑜のことばに、魯粛は力を得て、欣然、馬をかえして行った。――すると、同日の午過ぎ、またもや、張昭、顧雍、張紘、歩隲などの非戦派が、打ち揃ってここへ訪れ、 。「魯粛が来たのでしょう。実に怪しからん漢だ。

本文 三国志 赤壁の巻

針鼠

帰陣の後、涙をながして、 。「宋謙を失ったか」と、痛哀してやまなかった。　長史張紘は、よい時と考えて、 。「こういう失敗は、良き教訓です。君はいま御年も壮なために、ともすれば血気強暴にはやり給い、呉の諸君は、為にみな、しばしば、心を寒うしています。

本文 望蜀の巻 三国志