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New Word雷鼓
一 実に、とんでもない漢を、推薦してしまったというほかはない。人の推挙などというものは、うっかりできないものである――と、ひとり恐れ悔いて、当惑の色ありありと見えたのは、禰衡を推挙した孔融であった。 その日、そのせいか、孔融...
檻車
一 義はあっても、官爵はない。勇はあっても、官旗を持たない。そのために玄徳の軍は、どこまでも、私兵としか扱われなかった。 (よく戦ってくれた)と、恩賞の沙汰か、ねぎらいの言葉でもあるかと思いのほか、休むいとまもなく、(ここはも...
黄巾賊
一 後漢の建寧元年のころ。 今から約千七百八十年ほど前のことである。 一人の旅人があった。 腰に、一剣を佩いているほか、身なりはいたって見すぼらしいが、眉は秀で、唇は紅く、とりわけ聡明そうな眸や、豊かな頬をしてい...
孔子
孔子(こうし)とは、春秋時代の中国に実在した思想家・教育者。本名は孔丘(こうきゅう)、字は仲尼(ちゅうじ)。魯国に生まれ、儒家の始祖として知られ、後の中国はもちろん東アジアの思想・政治・文化に大きな影響を与えた。 三国志の時代(後漢...
立春大吉
一 年はついに暮れてしまった。 あくれば建安十三年。 新野の居城に、歳暮や歳旦を迎えているまも、一日とて孔明を思わぬ日のない玄徳は、立春の祭事がすむと、卜者に命じて吉日をえらばせ、三日の潔斎をして身をきよめた。 ...
琴を弾く高士
一 澄み暮れてゆく夕空の無辺は、天地の大と悠久を思わせる。白い星、淡い夕月――玄徳は黙々と広い野をひとりさまよってゆく。 「ああ、自分も早、四十七歳となるのに、この孤影、いつまで無為飄々たるのか」 ふと、駒を止めた。 ...
母と妻と友
一 呂布は、呂布らしい爪牙をあらわした。猛獣はついに飼主の手を咬んだのである。 けれど彼は元来、深慮遠謀な計画のもとにそれをやり得るような悪人型ではない。猛獣の発作のごとく至って単純なのである。欲望を達した後は、ひそかに気の...
舌戦
一 長江千里、夜が明けても日が暮れても、江岸の風景は何の変化もない。水は黄色く、ただ滔々淙々と舷を洗う音のみ耳につく。 船は夜昼なく、呉の北端、柴桑郡をさして下っている。――その途中、魯粛はひそかにこう考えた。 「痩せて...
白芙蓉
一 それは約五十名ほどの賊の小隊であった。中に驢に乗っている二、三の賊将が鉄鞭を指して、何かいっていたように見えたが、やがて、馬元義の姿を見かけたか、寺のほうへ向って、一散に近づいてきた。 「やあ、李朱氾。遅かったじゃないか」...
秋雨の頃
一 諸州の浪人の間で、 「近ごろ兗州の曹操は、頻りと賢を招き、士を募って、有能の士には好遇を与えるというじゃないか」と、もっぱら評判であった。 聞きつたえて、兗州(山東省西南部)へ志してゆく勇士や学者が多かった。 ...
童学草舎
一 城壁の望楼で、今しがた、鼓が鳴った。 市は宵の燈となった。 張飛は一度、市の辻へ帰った。そして昼間ひろげていた猪の露店をしまい、猪の股や肉切り庖丁などを苞にくくって持つとまた馳けだした。 「やあ、遅かったか」 ...