冒頭 董太師(とうたいし)とは、後漢末に「太師」の官位にあって朝廷を圧し、長安政権の実権を握った董卓(とうたく)を、作中で呼ぶ敬称です。王允(おういん)が「巳の刻に、董太師がお越しになる」と来訪を告げるように、外形上は国家の元...
冒頭 澠池(べんち)とは、洛陽の西方にある地名で、吉川英治『三国志』では西涼の董卓が兵馬を進めて駐屯し、洛陽の政変へ介入していく際の前進拠点として現れる土地です。董卓の軍勢が「澠池(河南省・洛陽西方)まで来ている」と伝えられ、...
一 洛陽の余燼も、ようやく熄んだ。 帝と皇弟の車駕も、かくて無事に宮門へ還幸になった。 何太后は、帝を迎えると、 「おお」 と、共に相擁したまま、しばらくは嗚咽にむせんでいた。 そして太后はすぐ、 ...
一 何進の幕将で中軍の校尉袁紹は、何進の首を抱いて、 「おのれ」と、青鎖門を睨んだ。 同じ何進の部下、呉匡も、 「おぼえていろ」と、怒髪を逆だて、宮門に火を放つと五百の精兵を駆って、なだれこんだ。 「十常侍をみな...
一 百官の拝礼が終って、 「新帝万歳」の声が、喪の禁苑をゆるがすと共に、御林軍(近衛兵)を指揮する袁紹は、 「次には、陰謀の首魁蹇碩を血まつりにあげん」 と、剣を抜いて宣言した。 そしてみずから宮中を捜しまわっ...