一宮
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「自分のほうがはるかに人間は上である」と、充分自信はもっているが、単にそれだけを強味として相手を鵜呑みにしてしまうわけにもゆかなかった。 袁一門の閥族中には、淮南の袁術のような者もいるし、大国だけに賢士を養い、計謀の器、智勇の良臣も少なくない。 それに、何といっても彼は名家の顕門で、いわば国の元老にも擬せられる家柄であるが、曹操は一宮内官の子で、しかもその父は早くから郷土に退き、その子曹操は少年から村の不良児といわれていた者にすぎない。 袁紹が洛陽の都にあって、軍官の府に重きをなしていた頃、...
年をとると気が短くなる――という人間の通有性は、大なり小なりそういう心理が無自覚に手伝ってくるせいもあろう。劉玄徳も多分に洩れず、自身の眼の黒いうちに、呉を征し、魏を亡ぼして、理想の実現を見ようとする気が、老来いよいよ急になっていた。 折ふしまた魏では、曹丕が王位に即いて、朝廷をないがしろにする風は益〻はなはだしいと聞き、玄徳はある日、成都の一宮に文武の臣を集めて、大いに魏の不道を鳴らし、また先に亡った関羽を惜しんで、 。「まず呉に向って、関羽の仇をそそぎ、転じて、驕れる魏を、一撃に討た...