桃園終春
不肖、張飛の如きにまで、今日、有難い恩爵を賜わって、不平どころか、有難いと思うことは人一倍も感じておるが、それにつけても、関羽が世にいないことを思うと、呉に対して、いよいよ報復の軍を誓わずにおれん。……無念だ、残念だ、呉を亡ぼさぬうちに、自分たちのみが、こんな恩命に温まって無事泰平に暮しておるのは、相済まなくて仕方がない。地下の関羽が、どんなに歯ぎしりしているかと思うと……」 。 張飛は哭きだした。 酔いと感情が、極点に達すると、彼はいつも、悲憤して哭くのが癖であった。
出師の巻
本文
三国志