蜀人・張松
すなわち四川省。 長江千里の上流、揚子江の水も三峡の嶮にせばめられて、天遠く、碧水いよいよ急に、風光明媚な地底の舟行を数日続けてゆくと、豁然、目のまえに一大高原地帯が展ける。 アジアの屋根、パミール高原に発する崑崙山系の起伏する地脈が支那西部に入っては岷山山脈となり、それらの諸嶺をめぐり流れる水は、岷江、金沱江、涪江、嘉陵江などにわかれては、またひとつ揚子江の大動脈へ注いでくる。 四川の名は、それに起因る。河川流域の盆地は、米、麦、桐油、木材などの天産豊かであり、気候温暖、人種は漢代初期から...
本文
望蜀の巻
三国志