孟徳新書
「蜀の国情や地理は、老人のはなしとか、書物とかで知るのみで、直接蜀の人から伺ったことがない。ねがわくは、ご本国の概要を聞かせ給え」 。「されば、蜀はわが大陸の西部に位し、路に錦江の嶮をひかえ、地勢は剣閣の万峰に囲まれ、周囲二百八程、縦横三万余里、鶏鳴狗吠白日も聞え、市井点綴、土はよく肥え、地は茂り、水旱の心配は少なく、国富み、民栄え、家に管絃あり、社交に和楽あり、人情は密に、文をこのみ、武を尚び、百年乱を知らずという国がらです」 。「おはなしを承っただけでも、一度遊びに行ってみたくなりま...
本文
望蜀の巻
三国志