城西
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孫権はもとより孝心の篤い人なので、心のうちでは煩悶したが、老母の意志には少しも逆らうことができない。その間に、母公と喬国老とは、明日の対面の場所や時刻まできめてしまった。 場所は城西の名刹甘露寺。――喬国老はいそいそ邸へ帰ると、すぐ使いを出して、玄徳の客館へ旨を伝えにやった。 事、志とちがってきたので、孫権は一夜煩悶したが、ひそかにこれを呂範へ相談すると、呂範は事もなげに片づけて云った。
口先で城は陥るものじゃないよ」 。 と、矢倉から嘲った。 すると、日没頃、城西の山から怪しい火が燃えだした。鍾進が先に立って消火に努めていると、夕闇の一角から、 。「西涼の龐徳、すでに数日前より、城内に在って、今宵を待てり」 。