太白
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曹操も業を遂げたあかつきには必ず厚くお酬いするであろう」と、その日は別れた。 その夜また、客があって、曹操にこういう言をなす者があると告げた。「このほど、侍中太史令の王立という者が、天文を観るに、昨年から太白星が天の河をつらぬき、熒星の運行もそれへ向って、両星が出合おうとしている。かくの如きは千年に一度か二度の現象で、金火の両星が交会すれば、きっと新しい天子が出現するといわれている。――思うに大漢の帝系もまさに終らんとする気運ではあるまいか。
これはただごとではない」と、大きくつぶやいた。 彼の独り言を怪しんで、典獄がそのわけを問うと、沮授はいった。「こよいは星の光いとほがらかなのに、いま天文を仰ぎ見るに、太白星をつらぬいて、一道の妖霧がかかっている。これ兵変のある凶兆である」 。 そして彼は、典獄を通して、主君の袁紹に会うことをしきりに――しかも、火急に嘆願したので、折から酒をのんでいた袁紹は、何事かと、面前にひかせて見た。
この嶮路。加うるに魏の郝昭が要害に籠っていては、とても往来はなりますまい。如かず、道をかえて、太白嶺の鳥道をこえ、祁山へ打って出てはいかがでしょう」 。 蜀の諸将は孔明にいった。 孔明は容れない。
ときに魏は改元第二年を迎えて、青龍二年春二月だった。 去年、摩坡という地方から、青龍が天に昇ったという奇異があって、これ国家の吉祥なりと、改元されたものである。 また、司馬懿はよく天文を観るので、近年北方の星気盛んで、魏に吉運の見えるに反し、彗星太白を犯し、蜀天は晦く、いまや天下の洪福は、わが魏皇帝に幸いせん――と予言していたところなので、 。「孔明三年の歳月を備えに蓄えて六度祁山に出づ」 。 という報に接したときには、 。