小沛
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「ぜひ自分に代って、徐州侯の封を受けてもらいたい、自分には子もあるが、柔弱者で、国家の重任にたえないから――」と、玄徳へ、国譲りを迫った。 しかし玄徳は、なんとしても肯き入れなかった。そしてわずかに近郷の小沛という一村を受けて、ひとまず城門を出、そこに兵を養いながら、なおよそながら徐州の地を守っていた。三。 快鞭一打―― 。
陶謙は、重臣の同意を得、少し力づいたものの如く、 。「早速、使いを派してくれ」と、いった。 使いをうけた玄徳は、取る物も取りあえず、小沛から駈けつけて、太守の病を見舞った。 陶謙は、枯木のような手をのばして、玄徳の手を握り、 。「あなたが、うんと承諾してくれないうちは、わしは安心して死ぬことができない。
家弟の無礼は、私から謝します。まあ、しばらくお駐りあって、ゆるゆる兵馬をお養い下さい。狭い土地ですが、小沛は水もよし、糧食も蓄えてありますから」 。 強って、玄徳はひき止めた。そして自分が前にいた小沛の宅地を彼のために提供した。
真ン中に、曹操がいた。面上、虹のごとき気宇を立って、大いに天下を談じていたが、たまたま劉備玄徳のうわさが出た。「あれも、いつのまにか、徐州の太守となりすましているが、聞くところによると、呂布を小沛に置いて扶持しているそうだ。――呂布の勇と、玄徳の器量が、結びついているのは、ちと将来の憂いかと思う。もし両人が一致して、力を此方へ集中して来ると、今でもちとうるさいことになる。
」 。 ふと、彼は怖ろしい一策を思いついた。早速、密書をしたためて、それを自分の小臣に持たせて、ひそかに、小沛の県城へ走らせた。 小沛までは、幾らの道のりもない。徒歩で走れば二刻、馬で飛ばせば一刻ともかからない。
「袁一門には、袁紹という大物がいることを忘れてはいけません。袁術とても、あの寿春城に拠って、今河南第一の勢いです。――それよりは、落ちた玄徳を招いて、巧みに用い、玄徳を小沛の県城に住まわせて、時節をうかがうことです。――時到らば兵を起し、玄徳を先手とし、袁術を破り、次いで、袁閥の長者たる袁紹をも亡ぼしてしまうのです。さもあれば天下の事、もう半ばは、あなたの掌にあるではありませんか」。
しかも孫策は今、日の出の勢いで、士気はあがっている――如かず、ここは一歩自重してまず北方の憂いをのぞき、味方の富強を増大しておいてから悠々南へ攻め入っても遅くないでしょう」 。「そうだ。……北隣の憂いといえば小沛の劉備と、徐州の呂布だが」 。「小沛の劉備は小勢ですから、踏みやぶるに造作はありませんが、呂布がひかえています。――そこで謀計をもって、二者を裂かねばかかれません」 。