祁山の野
――しかし当時の人、みなひそかに、切歯扼腕、ときの朝臣と為政者の腐敗堕落を怒らざるはなかった。――我もとよりよく汝を知る。汝は世々東海の浜にいて、家祖みな漢朝の鴻恩をこうむり、汝また、はじめ孝廉にあげられて朝に仕え、さらに恩遇をたまわりてようやく人と為る。――しかも朝廟あやうき間、献帝諸方を流浪のうちも、いまだ国を匡し、奸をのぞき、真に宸襟を安めたてまつれりという功も聞かず、ひとえに時流をうかがい権者に媚び、賢しげの理論を立てて歪曲の文を作り、賊子が唱えて大権を偸むの具に供す。それを売って栄...
五丈原の巻
本文
三国志