檀渓
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ご念までもなく、助太刀いたすが、して、貴君にはどんな用意があるのか」 。「実はすでに――東の方は峴山の道を、蔡和の手勢五千余騎で塞がせ、南の外門路一帯には、蔡仲に三千騎をさずけて伏兵とさせてある。なお、北門には、蔡勲の数千騎が固めて蟻の這いでる隙もないようにしているが……ただ西の門は、一路檀渓の流れに行きあたり、舟でもなければ渡ることはできないから、ここはまず安心して、ざっと、以上の通り手配はすべてととのっておる」 。「なるほど、必殺のご用意、この中に置かれては、いかな鬼神でも、遁れる術...
「今日はまた、どうしたご災難にお遭いなされたのじゃ。おさしつかえなくば聞かせて下さい」 。「実は檀渓を跳んで、九死のうちにのがれて来ましたので、衣服もこんなに湿うてしまいました」 。「あの檀渓を越えられたとすれば、よほどな危険に追いつめられたものでしょう。うわさ通り、今日の襄陽の会は、やはり単なる慶祝の意味ではなかったとみえますな」 。
かくて、新野へ帰ると、玄徳は城中の将士を一堂に集めて、 。「皆の者に、心配をかけてすまなかった。実は昨日、襄陽の会で、蔡瑁のため、危うく謀殺されようとしたが、檀渓を跳んで、九死に一生を拾って帰ったような始末……」 。 と、ありし顛末をつぶさに物語った。 愁眉をひらいた彼の臣下は、同時に、蔡瑁を憎み憤った。
――おそらく、呉に敗れた黄祖の寇を討つためのご評議でしょう」 。「劉表に対面した節は、どういう態度をとっていたがよいだろうか」 。「それとなく、襄陽の会や、檀渓の難のことをお話しあって、もし劉表が、呉の討手を君へお頼みあっても、かならずお引受けにならないことです」 。 張飛、孔明などを具して、玄徳はやがて、荊州の城へおもむいた。 供の兵五百と張飛を、城外に待たせておき、玄徳は孔明とふたりきりで城へ登った。