淮河の水上戦
曹丕は思わず長嘆を発して、敵ながら見事よと賞めたたえた。 要するにこれは、呉の徐盛が、江上から見えるあらゆる防禦施設に、すべて草木や布をおおいかぶせ、或いは住民をほかへ移し、或いは城廓には迷彩をほどこしたりして、まったく敵の目をくらましていたのだった。そして曹丕の旗艦以下、魏の全艦隊が、いまや淮河の隘路から長江へと出てくる気配を見たので、一夜に沿岸全部の偽装をかなぐり捨て、敢然、決戦態勢を示したものである。「彼にこの信念と用意がある以上、いかなる謀があるやも測り難い」と、曹丕はにわかに下知...
出師の巻
本文
三国志