覇陵
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吹く風の身に沁みるまま帝は簾のうちから訊かれた。薄暮の野に、白い一水が蜿々と流れていた。「覇陵橋の畔です」 。 李傕が答えた。 間もなく、その橋の上へ、御車がかかった。
「いかにも、追ッつけこれへお見えになろう」 。「はて、大仰な」 。 関羽は、何思ったか、駒をひっ返して覇陵橋の中ほどに突っ立った。 張遼は、それを見て、関羽が自分のことばを信じないのを知った。 彼が、狭い橋上のまン中に立ちふさがったのは、大勢を防ごうとする構えである。
あとの番卒などは、ものの数ではない。 関羽は、縦横になぎちらして、そのまま二夫人の車を通し、さて、大音にいって去った。「覇陵橋上、曹丞相と、暇をつげて、白日ここを通るものである。なんで汝らの科となろう。あとにて、関羽今日、東嶺関をこえたり、と都へ沙汰をいたせばよい」 。