一帆呉へ下る
「ともあれ、一刻も早く」と、関羽の調えてくれた船に乗って、玄徳たちは危うい岸を離れた。――その船の中で、関羽は糜夫人の死を聞いて、大いに嘆きながら、 。「むかし許田の御狩に会し、それがしが曹操を刺し殺そうとしたのを、あの時、あなた様が強ってお止めにならなければ、今日、こんな難儀にはお会いなさるまいものを」 。 と、彼らしくもない愚痴をこぼすのを、玄徳はなだめて、 。「いや、あの時は、天下のために、乱を醸すまいと思い、また曹操の人物を惜しんで止めたのだが――もし天が正しきを助けるものなら...
本文
三国志
赤壁の巻