陰平
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彼は、帷幕の将星をあつめて告げた。「魏は二度の勝利に味をしめて、このたびも旧時の例にならい、我かならず雍・郿の二郡をうかがうであろうとなして、そこを防ぎ固めるにちがいない。……ゆえに我は、鉾を転じて陰平、武都の二郡を急襲せん」 。 孔明の作戦は、その陰、武二郡を取って、敵の勢力をその方面へ分散させようとするにあったらしい。しかし敵の兵力を分けさせるためには、自己もまた兵力を分けねばならなかった。
――隴西の諸郡からは、何の情報もないか」 。「諸所みな守り努めているようです。ただ武都、陰平の二郡へやった連絡の者だけ、今もって帰ってきません」 。「さてこそ。孔明はその二郡を攻めようとしているのだ。
この世で汝に会うたのは、倖せの一つであった。蜀の国は、諸道とも天嶮、われ亡しとても、守るに憂いはない。ただ陰平の一道には弱点がある。仔細に備えて国の破れを招かぬように努めよ」 。 姜維が涙にのみ暮れていると、 。