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一 張郃の言葉を不服そうに聞いていた夏侯淵は、自分の決意はまげられぬというように、 「予がこの地を守り、陣をなすこと久しい。この度の決戦に、万一他の将に功を奪わるるが如きことあらば、なんの面目あって魏王に見えん。御身、よろしく...
鴻門の会に非ず
一 建安十六年冬十二月。ようやくにして玄徳は蜀へ入った。国境にかかると、 「主人の命によって、これまでお迎えに出た者です」 と、道のかたわらに四千余騎が出迎えていた。将の名を問えば、 「孟達です」 と、ことば短...
月落つ麦城
一 進まんか、前に荊州の呉軍がある。退かんか、後には魏の大軍がみちている。 眇々、敗軍の落ちてゆく野には、ただ悲風のみ腸を断つ。 「大将軍。試みに、呂蒙へお手紙を送ってみたら如何ですか。かつて呂蒙が陸口にいた時分は、よく...
鶏肋
一 ここまでは敗走一路をたどってきた曹操も、わが子曹彰に行き会って、その新手五万の兵を見ると、俄然、鋭気を新たにして、急にこういう軍令を宣した。 「ここに斜谷の天嶮あり、ここに北夷を平げて、勇気凜絶の新手五万あり、加うるに、わ...
短髪壮士
一 奪取した二ヵ所の陣地に、黄忠と魏延の二軍を入れて、涪水の線を守らせ、玄徳はひとまず涪城へかえった。 折からまた、遠くへ行った細作が帰ってきて、蜀外の異変をもたらした。 「呉の孫権が、漢中の張魯へ、謀略の密使をさし向け...
成都陥落
一 馬超は弱い。決して強いばかりの人間ではなかった。理に弱い。情にも弱い。 李恢はなお説いた。 「玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。こういう公明な主をえらぶに、何でうし...
絶妙好辞
一 思いがけぬ孔明の言葉に、老将黄忠の忿懣はやるかたなく、色をなして孔明に迫るのだった。 「昔、廉頗は年八十に及んで、なお米一斗、肉十斤を食い、天下の諸侯、これをおそれ、あえて趙の国境を犯さなかったといいます。まして私は、未だ...
魚紋
一 玄徳の死は、影響するところ大きかった。蜀帝崩ず、と聞えて、誰よりも歓んだのは、魏帝曹丕で、 「この機会に大軍を派せば、一鼓して成都も陥すことができるのではないか」 と虎視眈々、群臣に諮ったが、賈詡は、 「孔明がお...
高楼弾琴
一 魏の大陣容はととのった。 辛毘、あざなは佐治、これは潁州陽翟の生れ、大才の聞え夙にたかく、いまや魏主曹叡の軍師として、つねに帝座まぢかく奉侍している。 孫礼、字は徳達は、護軍の大将として早くより戦場にある曹真の大軍...
西蜀四十一州図
一 覇者は己れを凌ぐ者を忌む。 張松の眼つきも態度も、曹操は初めから虫が好かない。 しかも、彼の誇る、虎衛軍五万の教練を陪観するに、いかにも冷笑している風がある。曹操たる者、怒気を発せずにはいられなかった。 「張松...
次男曹彰
一 横道から米倉山の一端へ出て、魏の損害をさらに大にしたものは、蜀の劉封と孟達であった。 これらの別働隊は、もちろん孔明のさしずによって、遠く迂回し、敵も味方も不測な地点から、黄忠と趙雲たちを扶けたものである。 それに...
蜀呉修交
一 要するに、陸遜の献策は。 一つには魏の求めに逆らわず、二つには蜀との宿怨を結ばず、三つにはいよいよ自軍の内容を充実して形勢のよきに従う。 ということであった。 呉の方針は、それを旨として、以後、軍は進めて、あ...
洛陽に生色還る
一 司馬懿仲達軍のこのときの行軍は、二日行程の道のりを一日に進んで行ったというから、何にしても非常に迅速なものだったにちがいない。 しかも仲達は、これに先だって、参軍の梁畿という者に命じ、数多の第五部隊を用いて、新城付近へ潜...
進軍
一 劉璋は面に狼狽のいろを隠せなかった。 「曹操にそんな野心があってはどうもならん。張魯も蜀を狙う狼。曹操も蜀をうかがう虎。いったいどうしたらいいのじゃ」 気が弱い、策がない。劉璋はただ不安に駆られるばかりな眼をして云っ...
私情を斬る
一 漢中王の劉玄徳は、この春、建安二十五年をもって、ちょうど六十歳になった。魏の曹操より六ツ年下であった。 その曹操の死は、早くも成都に聞え、多年の好敵手を失った玄徳の胸中には、一抹落莫の感なきを得なかったろう。敵ながら惜し...
老将の功
一 郭淮の進言に面目をとどめた張郃は、この一戦にすべての汚名を払拭せんものと、意気も新たに、五千余騎を従えて、葭萌関に馬を進めた。 この関を守るは、蜀の孟達、霍峻の両大将であった。 張郃軍あらためて攻めきたるの報を得て...
成都鳴動
一 宮殿の廂をこえて、月の光は玄徳の膝の辺まで映している。妃は、燭が消えているのに気づいて、侍女を呼んで明りをつけさせながら、 「どうなさいましたか」 と、玄徳の側へ寄った。 「いや、几に倚って、独り書を読んでいたの...
鶏家全慶
一 渭水の早馬は櫛の歯をひくように洛陽へ急を告げた。 そのことごとくが敗報である。 魏帝曹叡は、色を失い、群臣を会して、誰かいま国を救う者はなきや、と憂いにみちて云った。 華歆が奏した。 「この上は、ただ帝み...