冒頭 芙蓉娘(ふようじょう)とは、吉川英治『三国志』に登場する女性で、姓は鴻、名は芙蓉という、地方の県城を預かっていた領主の娘です。黄巾賊の乱で城と家が滅び、老僧に古塔へ匿われていたところを劉備に託され、白馬で落ちのびます。 ...
冒頭 安喜県(あんきけん)とは、後漢末の地方行政区画である県の一つで、吉川英治『三国志』では劉備玄徳が県尉として赴任し、地方官としての最初期の経歴を形づくる任地として登場する地名です。任地は中山府(河北省・定県)の安喜県とされます...
冒頭 鴻芙蓉(こうふよう)とは、吉川英治『三国志』に登場する鴻家の息女で、黄巾賊の乱による没落のさなかに劉備と縁を結ぶ女性です。 生涯 地方の県城を預かった城長の娘で、名を芙蓉、姓を鴻という。黄巾賊の乱入で県城が焼か...
冒頭 南門衛少督(なんもんえいしょうとく)とは、城郭や県城の南門を警備する部隊の指揮系統に属する下級の指揮職を指す呼称です。吉川英治『三国志』では、張飛が「県城の南門衛少督」を務めていたと自称し、地方豪族の鴻家に仕える武士とし...
冒頭 鴻家(こうけ)とは、吉川英治『三国志』において、黄巾の乱前後に一県の県城を支配していた在地の豪族ないし領主層の家を指す呼称です。鴻家の姫として鴻芙蓉が語られ、家の滅亡後も、その遺臣・旧縁によって保護と再興の動きが示されま...
冒頭 衛少督(えいしょうとく)とは、城門や城内の警備をつかさどる衛士の部隊に属し、その指揮を補佐する下級の武官職を指す呼称です。 概要 「督」は軍事・警備における監督、指揮を意味し、「少」は上位の督に対する副・次席の...
冒頭 県城(けんじょう)とは、県の政庁が置かれた中心都市であり、防衛のため城壁を備えた城郭都市を指す語です。吉川英治『三国志』では「この地方県城を預かっておられた領主」など、地域支配の拠点として用いられます。 概要 ...
冒頭 県軍(けんぐん)とは、後漢末の地方行政区画である県が、治安維持や賊徒の捜索・討伐のために動員した武装勢力、または県の官吏が統率する部隊を指す呼び名です。黄巾賊などの反乱勢力に対し、県の側が自衛・警備として編成する兵力とし...
冒頭 翼徳(よくとく)とは、張飛(ちょうひ)の字(あざな)で、吉川英治『三国志』では「翼徳張飛」と併称されることがある名です。張飛自身が「名は張飛、字は翼徳」と名乗り、黄巾賊の乱に際しての経歴と結びつけて語られます。 生涯 ...
一 蟠桃河の水は紅くなった。両岸の桃園は紅霞をひき、夜は眉のような月が香った。 けれど、その水にも、詩を詠む人を乗せた一艘の舟もないし、杖をひいて逍遥する雅人の影もなかった。 「おっ母さん、行ってきますよ」 「ああ、...
一 江南江東八十一州は、今や、時代の人、孫策の治めるところとなった。兵は強く、地味は肥沃、文化は溌剌と清新を呈してきて、 小覇王孫郎 の位置は、確固たるものになった。 諸将を分けて、各地の要害を守らせる一方、ひろ...
一 張飛と関羽のふたりは、殿軍となって、二千余騎を県城の外にまとめ、 「この地を去る思い出に」 とばかり、呂布の兵を踏みやぶり、その部将の魏続、宋憲などに手痛い打撃を与えて、 「これで幾らか胸がすいた」と、先へ落ちて...
一 それよりも前に、天水郡の太守馬遵は、宿将重臣を集めて、隣郡の救援について、議するところがあった。 主記の梁虔がその時云った。 「夏侯駙馬は、魏の金枝玉葉。すぐ隣にありながら、南安の危急を救わなかったとあれば、後に必ず...
一 呂布は、呂布らしい爪牙をあらわした。猛獣はついに飼主の手を咬んだのである。 けれど彼は元来、深慮遠謀な計画のもとにそれをやり得るような悪人型ではない。猛獣の発作のごとく至って単純なのである。欲望を達した後は、ひそかに気の...
一 年明けて、建安三年。 曹操もはや四十を幾つかこえ、威容人品ふたつながら備わって、覇気熱情も日頃は温雅典麗な貴人の風につつまれている。時には閑を愛して独り書を読み、詩作にふけり、終日、春闌の室を出ることもなかった。また或る...
一 母と子は、仕事の庭に、きょうも他念なく、蓆機に向って、蓆を織っていた。 がたん…… ことん がたん 水車の回るような単調な音がくり返されていた。 だが、その音にも、きょうはなんとなく活気があり、歓...
一 白馬は疎林の細道を西北へ向ってまっしぐらに駆けて行った。秋風に舞う木の葉は、鞍上の劉備と芙蓉の影を、征箭のようにかすめた。 やがて曠い野に出た。 野に出ても、二人の身をなお、箭うなりがかすめた。今度のは木の葉のそれ...
一 次の日、陳珪は、また静かに、病床に横臥していたが、つらつら険悪な世上のうごきを考えると小沛にいる劉玄徳の位置は、実に危険なものに思われてならなかった。 「呂布は前門の虎だし、袁術は後門の狼にも等しい。その二人に挟まれていて...
一 それは約五十名ほどの賊の小隊であった。中に驢に乗っている二、三の賊将が鉄鞭を指して、何かいっていたように見えたが、やがて、馬元義の姿を見かけたか、寺のほうへ向って、一散に近づいてきた。 「やあ、李朱氾。遅かったじゃないか」...
一 張飛は、不平でたまらなかった。――呂布が帰るに際して、玄徳が自身、城門外まで送りに出た姿を見かけたので、なおさらのこと、 「ごていねいにも程がある」と、業腹が煮えてきたのであった。 「家兄。お人よしも、度が過ぎると、馬...
一 「劉氏。もし、劉氏ではありませんか」 誰か呼びかける人があった。 その日、劉玄徳は、朱雋の官邸を訪ねることがあって、王城内の禁門の辺りを歩いていた。 振向いてみると、それは郎中張均であった。張均は今、参内すると...