逆巻
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探り知った曹操は、 。「思うつぼに」と、ほくそ笑んで、一時三方へ散らした各部隊と聯絡をとり、日と刻を諜し合わせて、袁紹の本陣へ急迫した。 黄河は逆巻き、大山は崩れ、ふたたび天地開闢前の晦冥がきたかと思われた。袁紹は甲を着るいとまもなく、単衣帛髪のまま馬に飛び乗って逃げた。 あとには、ただ一人、嫡子の袁譚がついて行ったのみである。
「気量のものを容れる寛度をもって、もし請い問わるるならば、申してもよい。――曹操が百万の勢も孔明からいわしめれば、群がれる蟻のようなものです。わが一指をさせば、こなごなに分裂し、わが片手を動かさば、大江の水も逆巻いて、立ちどころに彼が百船も呑み去るであろう」 。 烱々たる眸は天の一角を射ていた。魯粛は、その眸を、じっと見て、狂人ではないことを信念した。
まだ舷々相摩しもせぬ戦の真先に、弟を討たれて、蔡瑁は心頭に怒気を燃やし、一気に呉の船列を粉砕せよと声をからして、将楼から号令した。 靄はようやくはれて、両軍数千の船は、陣々入り乱れながらも、一艘もあまさず見ることができる。真赤に昇り出ずる陽と反対に、大江の水は逆巻き、咬みあう黒波白浪、さけびあう疾風飛沫、物すさまじい狂濤石矢の大血戦はここに展開された。 蔡瑁を乗せている旗艦を中心として、一隊の縦隊船列は、深く呉軍の中へ進んで行ったが、これは水戦にくらい魏軍の主力を、巧みに呉の甘寧が、味方の...
見るまに、山のような、紅蓮と化して、大波の底に沈没した。 もっと困難を極めたのは、例の連環の計によって、大船と大船、大艦と大艦は、ほとんどみな連鎖交縛していたことである。そのために、一艦炎上すればまた一艦、一船燃え沈めばまた一船、ほとんど、交戦態勢を作るいとまもなく、焼けては没し、燃えては沈み、烏林湾の水面はさながら発狂したように、炎々と真赤に逆巻く渦、渦、渦をえがいていた。三。 なにが炸裂するのか、爆煙の噴きあがるたび、花火のような焔が宙天へ走った。