Search Results
New Word食客
一 北方攻略の業はここにまず完成を見た。 次いで、曹操の胸に秘められているものは、いうまでもなく、南方討伐であろう。 が、彼は、冀州城の地がよほど気に入ったとみえて、ここに逗留していること久しかった。 一年余の工...
新野を捨てて
一 百万の軍旅は、いま河南の宛城(南陽)まで来て、近県の糧米や軍需品を徴発し、いよいよ進撃に移るべく、再整備をしていた。 そこへ、荊州から降参の使いとして、宋忠の一行が着いた。 宋忠は、宛城の中で、曹操に謁して、降参の...
殺地の客
一 孔明の使命はまず成功したといってよい。呉の出師は思いどおり実現された。孔明はあらためて孫権に暇を告げ、その日、すこし遅れて一艘の軍船に身を託していた。 同舟の人々は、みな前線におもむく将士である。中に、程普、魯粛の二将も...
降参船
一 「この大機会を逸してどうしましょうぞ」 という魯粛の諫めに励まされて、周瑜もにわかにふるい起ち、 「まず、甘寧を呼べ」と令し、営中の参謀部は、俄然、活気を呈した。 「甘寧にござりますが」 「おお、来たか」 ...
檀渓を跳ぶ
一 蔡瑁と蔡夫人の調略は、その後もやまなかった。一度の失敗は、却ってそれをつのらせた傾きさえある。 「どうしても、玄徳を除かなければ――」と、躍起になって考えた。 けれども肝腎な劉表がそれを許さない。同じ漢室の裔ではある...
許都と荊州
一 「ここに一計がないでもありません」 と、孔明は声をはばかって、ささやいた。 「国主の劉表は病重く、近頃の容態はどうやら危篤のようです。これは天が君に幸いするものでなくてなんでしょう。よろしく荊州を借りて、万策をお計りあ...
大号令
一 柴桑城の大堂には、暁天、早くも文武の諸将が整列して、呉主孫権の出座を迎えていた。 夜来、幾度か早馬があって、鄱陽湖の周瑜は、未明に自邸を立ち、早朝登城して、今日の大評議に臨むであろうと、前触れがきているからである。 ...
白羽扇
一 荊州、襄陽、南郡三ヵ所の城を一挙に収めて、一躍、持たぬ国から持てる国へと、その面目を一新しかけてきた機運を迎えて、玄徳は、 「ここでよい気になってはならぬ――」と、大いに自分を慎んだ。 「亮先生」 「何ですか」 ...
母子草
一 于禁は四日目に帰ってきた。 そのあいだ曹操は落着かない容子に見えた。しきりに結果を待ちわびていたらしい。 「ただいま立ち帰りました。遠く追いついて、蔡夫人、劉琮ともに、かくの如く、首にして参りました」 于禁の報...
出廬
一 十年語り合っても理解し得ない人と人もあるし、一夕の間に百年の知己となる人と人もある。 玄徳と孔明とは、お互いに、一見旧知のごとき情を抱いた。いわゆる意気相許したというものであろう。 孔明は、やがて云った。 「も...
柳眉剣簪
一 その後、玄徳の身辺に、一つの異変が生じた。それは、劉琦君の死であった。 故劉表の嫡子として、玄徳はあくまで琦君を立ててきたが、生来多病の劉琦は、ついに襄陽城中でまだ若いのに長逝した。 孔明はその葬儀委員長の任を済ま...
一帆呉へ下る
一 玄徳の生涯のうちでも、この時の敗戦行は、大難中の大難であったといえるであろう。 曹操も初めのうちは、部下の大将に追撃させておいたが、 「今をおいて玄徳を討つ時はなく、ここで玄徳を逸したら野に虎を放つようなものでしょう...
吟嘯浪士
一 主従は相見て、狂喜し合った。 「おう、趙雲ではないか。どうして、わしがここにいるのが分った」 「ご無事なお姿を拝して、ほっと致しました。この村まで来ると、昨夜、見馴れぬ高官が、童子に誘われて、水鏡先生のお宅へ入ったと百...
亡流
一 渦まく水、山のような怒濤、そして岸うつ飛沫。この夜、白河の底に、溺れ死んだ人馬の数はどれ程か、その大量なこと、はかり知るべくもない。 堰を切り、流した水なので、水勢は一時的ではあった。しかしなお、余勢の激流は滔々と岸を洗...
一掴三城
一 一方、孫乾は油江口にある味方の陣に帰ると、すぐ玄徳に、帰りを告げて、 「いずれ周瑜が自身で答礼に参るといっておりました」と、話した。 玄徳は、孔明と顔見合わせて、 「これほどな儀礼に、周瑜が自身で答礼に来るという...
蜂と世子
一 呉はここに、陸海軍とも大勝を博したので、勢いに乗って、水陸から敵の本城へ攻めよせた。 さしも長い年月、ここに、 (江夏の黄祖あり) と誇っていた地盤も、いまは痕かたもなく呉軍の蹂躙するところとなった。 城...
火中の栗
――一同、その一沓音にふりかえって、誰かと見ると、零陵泉陵の産、黄蓋、字は公覆といって、いま呉の糧財奉行、すなわち大蔵大臣の人物だった。 ぎょろりと、大堂を見わたしながら、天井をゆするような声で、 「諸公はいったい何しとるん...