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New Word長坂橋
一 この日、曹操は景山の上から、軍の情勢をながめていたが、ふいに指さして、 「曹洪、曹洪。あれは誰だ。まるで無人の境を行くように、わが陣地を駆け破って通る不敵者は?」 と、早口に訊ねた。 曹洪を始め、そのほか群将も...
髪を捧ぐ
一 街亭の大捷は、魏の強大をいよいよ誇らしめた。魏の国内では、その頃戦捷気分に拍車をかけて、 「この際、蜀へ攻め入って、禍根を断て」 という輿論さえ興ったほどである。司馬懿仲達は、帝がそれにうごかされんことをおそれて、 ...
殺地の客
一 孔明の使命はまず成功したといってよい。呉の出師は思いどおり実現された。孔明はあらためて孫権に暇を告げ、その日、すこし遅れて一艘の軍船に身を託していた。 同舟の人々は、みな前線におもむく将士である。中に、程普、魯粛の二将も...
母子草
一 于禁は四日目に帰ってきた。 そのあいだ曹操は落着かない容子に見えた。しきりに結果を待ちわびていたらしい。 「ただいま立ち帰りました。遠く追いついて、蔡夫人、劉琮ともに、かくの如く、首にして参りました」 于禁の報...
舌戦
一 長江千里、夜が明けても日が暮れても、江岸の風景は何の変化もない。水は黄色く、ただ滔々淙々と舷を洗う音のみ耳につく。 船は夜昼なく、呉の北端、柴桑郡をさして下っている。――その途中、魯粛はひそかにこう考えた。 「痩せて...
一帆呉へ下る
一 玄徳の生涯のうちでも、この時の敗戦行は、大難中の大難であったといえるであろう。 曹操も初めのうちは、部下の大将に追撃させておいたが、 「今をおいて玄徳を討つ時はなく、ここで玄徳を逸したら野に虎を放つようなものでしょう...
進軍
一 劉璋は面に狼狽のいろを隠せなかった。 「曹操にそんな野心があってはどうもならん。張魯も蜀を狙う狼。曹操も蜀をうかがう虎。いったいどうしたらいいのじゃ」 気が弱い、策がない。劉璋はただ不安に駆られるばかりな眼をして云っ...
亡流
一 渦まく水、山のような怒濤、そして岸うつ飛沫。この夜、白河の底に、溺れ死んだ人馬の数はどれ程か、その大量なこと、はかり知るべくもない。 堰を切り、流した水なので、水勢は一時的ではあった。しかしなお、余勢の激流は滔々と岸を洗...
烽火台
一 瑾の使いは失敗に帰した。ほうほうの態で呉へ帰り、ありのままを孫権に復命した。 「推参なる長髯獣め。われに荊州を奪るの力なしと見くびったか」 孫権は、荊州攻略の大兵をうごかさんとして、その建業城の大閣に、群臣の参集を求...
小覇王
一 曠の陣頭で、晴々と、太史慈に笑いかえされたので、年少な孫策は、 「よしッ今日こそ、きのうの勝負をつけてみせる」と、馬を躍らしかけた。 「待ちたまえ」と、腹心の程普は、あわてて彼の馬前に立ちふさがりながら、 「口賢い...
荊州往来
一 周瑜は、その後も柴桑にいて瘡養生をしていたが、勅使に接して、思いがけぬ叙封の沙汰を拝すると、たちまち病も忘れて、呉侯孫権へ、次のような書簡をしたためて送った。 天子、詔を降して、いま不肖周瑜に、南郡の太守に封ずとの恩命があり...
功なき関羽
一 難路へかかったため、全軍、まったく進退を失い、雪は吹き積もるばかりなので、曹操は焦だって、馬上から叱った。 「どうしたのだ、先鋒の隊は」 前隊の将士は、泣かんばかりな顔を揃えて、雪風の中から答えた。 「ゆうべの大...