二虎競食の計
冒頭
二虎競食の計(にこきょうしょくのけい)とは、二匹の猛虎が同じ餌に引き寄せられて争えば、勝った側も傷つき、第三者がその隙に利益を得られるという発想にもとづく離間・誘導の策です。二者を直接討たず、利害や疑心を利用して共倒れに近い状態へ導く点に特色があります。
概要
吉川英治『三国志』では、曹操陣営で荀彧が曹操に献じた策略として説明され、徐州の劉備と呂布の関係を「餌」をもって緊張させ、互いに討ち合う展開へ誘う案として語られます。具体的には、劉備が正式な詔勅によって徐州を許されていない点を利用し、勅を与えることを餌にして「呂布を殺せ」と密旨を添え、劉備に実行させようとします。
意味
この策の要諦は、当事者双方の性格・立場(疑心の芽、名分への拘束、利害の衝突)を見極め、第三者が「餌」となる誘因を投じて対立を先鋭化させることにあります。作中の比喩では、二虎が咬み合えば「必ず一虎は仆れ、一虎は勝てりといえども満身痍だらけ」になり、最終的に「二虎の皮を獲ることはきわめて容易」と説かれています。
作中での用例
作中ではこの策が劉備・呂布間で試みられるものの、劉備が曹操の密書を示して呂布の疑いを解くことで、曹操の使者が「失敗だ。これでは、二虎競食の計もなんの意味もない」と述べる場面が置かれ、策が成立しない場合の脆さも示されています。
史実との違い