劉備
劉備(りゅうび)とは
劉備は、中国三国時代の蜀(しょく、蜀漢)の初代皇帝となった人物です。三国志の物語世界において最も親しまれている英雄の一人であり、その生き様は現代に至るまで多くの読者の共感を呼び続けています。
生涯
劉備は、漢王朝の皇室の血を引くものの貧しい家に生まれ育ちました。彼は少年時代から義侠心に富み、周囲から慕われる存在でした。やがて時代が乱れる中で、桃園結義(とうえんけつぎ)という有名なエピソードで関羽(かんう)・張飛(ちょうひ)と兄弟の契りを結び、ともに天下の平定を誓います。
その後、劉備はさまざまな地を転々としながらも民のために義を守り続け、数多の困難や裏切りに遭いながらも、ついに蜀の建国へ至ります。彼の人生はまさしく苦難と流浪の連続でしたが、誠実な人柄と人望で有能な人物たちを集め、ついに皇帝へと上り詰めました。晩年は義兄弟の仇である呉への復讐を誓いますが、失意の中で夷陵の戦いに敗れ、白帝城で病没しました。
人物
劉備は「仁義」を何よりも重んじる性格で、どこまでも人情味深い人物として描かれます。儒家の理想を体現するかのような雰囲気を持ち、困っている人を見捨てず、家臣や民から深い信頼を寄せられていました。外見は耳が大きく、腕が膝まで届くなど、やや異相として描かれることも多いです。
妻子や血縁
劉備は幾度か結婚していますが、最も知られているのは孫尚香(そんしょうこう)との結婚です。また、息子の劉禅(りゅうぜん)は、蜀漢の第二代皇帝として劉備の後を継ぎます。ちなみに、物語内では義兄弟として関羽・張飛が劉備と固い絆で結ばれていますが、これは血縁関係ではなく義によるものです。
関連する人物
劉備にとって特に関わりが深いのは桃園結義で結ばれた関羽・張飛であり、また、軍師として諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)が加わってから大きな飛躍を遂げます。この三人(諸葛亮を加えれば四人)の結束は三国志を象徴する要素でもあります。
有名なエピソード
劉備の人生には数々の有名なエピソードがあります。例えば、敵に追われて幼い息子を抱えながらも民衆の命を最優先する姿、「三顧の礼」で諸葛亮を迎えるために三度も訪れる誠実さなどは、とくに名場面として語り継がれています。また、最期においても諸葛亮に息子劉禅の将来を託す場面は、多くの読者の涙を誘います。
吉川英治の三国志と史実で違う点
吉川英治の三国志では、劉備はより一層「民の王・仁義の人」として描かれていますが、史実では必ずしも完璧な理想像ではなく、大きな野心や戦略家としての一面も併せ持っていたと伝わっています。また、義兄弟の契りや諸葛亮との出会いなど、後世の創作が加わったエピソードが多く、史実と小説で差異が見られます。
劉備という人物の歩んだ道には、仁義・友情・人を思う心が溢れています。彼を主人公に三国志の壮大なドラマは展開していきますので、その心の動きや成長にも注目しながら読み進めると、物語の深みがより一層味わえるはずです。