九族
冒頭
九族(きゅうぞく)とは、罪人本人だけでなく、その近親一門までを同罪として処罰の対象に含めるという、古代中国の連座的な刑罰観念を指す語です。
概要
「一人謀叛すれば九族滅す」という形で、謀反など国家秩序を覆す大罪に対し、本人の処刑にとどまらず、親族全体の根絶をもって再発防止と威嚇を図る発想を表します。吉川三国志では、董承の事件をめぐり曹操が「天下の大法」として言い立て、董承の娘である貴妃にまで刑を及ぼす口実として用いられます 。
意味
九族の「九」は、親族の範囲が本人の周囲に広く及ぶことを示す言い方で、具体的な数え方には諸説がありますが、一般に近親・姻戚を含む「一門」を意味します。小説中でも「九族を誅して」「九族まで亡ぼす」といった言い回しで、本人の成否や罪責が家族・親族全体の存亡に直結する重罰として描かれます 。
当時の文脈での使われ方
軍や政争の場では、主君への忠誠や任務遂行の覚悟を誓う誇張表現としても現れ、徐盛が失敗した場合に「九族を誅して」も恨まないと述べて責任を引き受ける例があります 。また、相手を屈服させる威迫として、孔明が孟獲に「こんどは、汝の九族まで亡ぼすかも知れない」と告げる形でも用いられます 。
吉川三国志での扱いと史実や演義との違い
史実にも一族連座の処罰は見られる一方、「九族」という定型句は威嚇・修辞として用いられる場合もあり、吉川三国志でも法の断罪というより政治的威圧や誓約の言語としての側面が強調されます。