匈奴

匈奴(きょうど)とは、中国の北方に広がった広大な草原地帯に暮らした、遊牧民族の呼び名である。紀元前3世紀から4世紀ごろにかけて活動が顕著で、特に中国の前漢時代には強大な部族連合国家を築き、中華王朝にとって長く脅威となった。匈奴の支配領域は非常に広く、中国北部から中央アジアにまで及び、遊牧騎馬民族特有の機動力を生かした突撃戦法を得意とした。
 
漢の武帝のころに漢と匈奴の抗争は激化し、いわゆる匈奴征伐が行われたが、その後も何度か和睦と対立を繰り返した。周辺諸国にも大きな影響を与え、中国史のみならず東アジア全体の歴史に大きな足跡を残している。
 
三国志の時代においても、匈奴は北方の異民族として度々登場し、時には漢王朝の動乱に乗じて南下し、後漢末の群雄割拠期では、一部の匈奴王族が中国の内地に割拠して政権を樹立するなど、その影響を見せた。三国志世界においても、彼らは直接的な脅威であるばかりか、政治のバランスを左右する存在として、その動向がたびたび注目される。
 
匈奴のリーダーは「単于(ぜんう)」と呼ばれ、漢と異民族「和親政策」の象徴として漢の皇女との婚姻が取り交わされることもあった。やがて漢王朝の力が衰退するとともに、匈奴も勢力が分裂し、一部は西方へ移動して後世のフン族に繋がったともいわれている。
 
匈奴の描写は、時として中国側からの視点で描かれるため、野蛮や侵略性が強調されることも多いが、独自の文化と誇り高い遊牧の精神を持った民族であった。吉川英治三国志でも、北方勢力として語られる場面が登場し、中国大陸の情勢が大きく揺れる背景に、絶えずその存在感を放っている。
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