セン

セン（せん）とは三国志に登場する人物の一人です。

劉備の妻であり、特に劉禅（りゅうぜん、後の蜀漢の二代目皇帝）の母として知られています。姓は「呉」であり、呉夫人や呉氏とも呼ばれますが、小説「三国志」では「セン夫人」と名前で記されることが多く、代表的には「セン」という呼称でも親しまれています。

彼女の生涯については、『三国志演義』と吉川英治の三国志では、やや脚色されたエピソードも多く、強い意志と母性愛を持ち、動乱の時代の中で劉備と共に国々を転々とし、その苦難や悲哀を象徴する女性として描かれています。史実では彼女に関する記述はわずかで、主に劉禅の母、すなわち蜀の皇太后として存在感を持ちました。物語の中では曹操による追撃の中、安楽里（あんらくり）で自害する場面が特に有名です。

関連する人物としては夫の劉備、その子の劉禅、また劉備の協力者たち（関羽、張飛など）が挙げられます。

史実と吉川英治版で大きく異なるのは、物語性を持たせるために彼女の描写や行動がより劇的になっている点です。実際の歴史記録では、彼女自身の具体的な行動や性格についてはほとんど記載がなく、物語的要素が大きく強調されています。

全体的に、センは三国志の中で母なる存在、一つの時代の「運命の人」として、多くの読者に印象深く刻まれる女性像となっています。