祖茂

祖茂(そも)とは
孫堅に仕えた武将で、董卓討伐戦の汜水関前後での退却戦において、主君の窮地を救った直臣として描かれる。華雄の追撃下、孫堅に目立つ朱金の兜を脱ぐよう諫め、その直後に華雄に討ち取られた場面が吉川英治三国志』では印象的である 。
 
生涯
初出は、董卓軍の奇襲で孫堅軍が大敗し、旗本程普黄蓋とも離ればなれになる退却戦。孫堅のそばに残った「祖茂という家来一人」という描写で位置づけられ、そのまま主君の逃避を護る役回りに入る 。追撃が激しく矢が集中する原因が孫堅の朱金の兜にあると見抜き、兜を外させて目印を断たせる機転を見せるが、やがて華雄に見つかって挑みかけ、斬首されて戦死する 。孫堅はすぐ近くの茂みに潜みつつこれを目撃し、日頃の忠勤を思って落涙する描写で、祖茂の死は一章の締めくくりとして強い余韻を残す 。
 
人物
危地で冷静かつ的確に状況を見抜く眼と、主君を逃がすためなら自ら危険を引き受ける烈しさを併せもつ。兜一つが敵の照準になる、と即断し実行に移す判断力と、すぐ後に華雄に対して槍をしごいて突かんとする剛胆さが対照的に描かれている 。
 
関連する人物
孫堅 主君。汜水関方面への進撃で先鋒を担い、敗走の中で祖茂に救われる。祖茂の戦死を目の当たりにし、涙する場面がある 。
華雄 董卓配下の猛将。退却する孫堅を追い、潜む祖茂を見抜いて一刀で斬る役として登場する 。
程普黄蓋 同じく孫堅配下。敗走で主君と離れたため、祖茂が単独で孫堅を守る構図が強調される 。
 
有名なエピソード
朱金の兜を外させて矢の的を逸らす場面が白眉。祖茂は「をお脱りなさい。あなたの朱金のは、燦として、あまりに赤いから眼につきます。敵の目印になります」と進言し、孫堅は焼け残りの軒柱に兜を掛けて敵の矢を引きつけ、その隙に林へ潜む。やがて「ばかりだ」と敵兵が騒ぐ中、華雄が現れ、祖茂は躍り出て挑むも一閃で斬られる。この短い連鎖が、機略と殉死を一息に描き出す名場面になっている 。
 
吉川英治三国志での扱われ方と、史実・他伝承との違い
吉川英治版では、祖茂の行為は「兜を外させる機転」と「自ら突撃して戦死」という二拍子で描かれ、身替わり策の細工は軒柱に掛けた兜が矢を集める描写に留まる 。他の演義的伝承で流布する「主君の兜を被って誘い出し、羽根房を焼いて敵の目を欺く」といった“身代わりの火計”の誇張よりも、ここでは静的な機略と直情の一騎打ち的最期に重心がある点が特徴的である。背景として、この戦は董卓への十八路軍の進発、先鋒を孫堅が務めて汜水関へ迫る流れの中に置かれており、その敗走が連合軍中枢にも波紋を及ぼす叙述で締めくくられる 。
「祖茂」の基本情報
総登場回数
7回
活動期間
1巻にわたって登場
初回登場
群星の巻
最終登場
群星の巻
最も活躍した巻
群星の巻 (7回登場)
「祖茂」登場回数
合計: 7回
0 1 3 5 7 0 桃園の巻 7 群星の巻 0 草莽の巻 0 臣道の巻 0 孔明の巻 0 赤壁の巻 0 望蜀の巻 0 図南の巻 0 出師の巻 0 五丈原の巻
最終更新日: 28日前