袞龍
冒頭
袞龍(こんりゅう)とは、天子の礼服である袞衣に織り出された龍文様、またはその礼服自体を指す言葉です。吉川英治『三国志』では、天子に近い威光や禁中の権威を示す語として用いられ、許章が「袞龍の袖にかくれて哀訴」する場面や、献帝が「袞龍の袖」を目に当てて嘆く場面が見える 。
概要
「袞」は礼服の一種で、冕冠と組み合わされる最上位級の朝服をいい、龍は皇帝権威の象徴として衣文に配されます。したがって「袞龍」は、単なる衣服名ではなく、君主の身体に属する荘厳な装いとして、天子の存在そのものを暗示する働きを持ちます 。
意味
作中の「袞龍の袖」は、天子の袖、すなわち君主の衣の権威を具体物で示す表現です。許章がそこに「かくれて」訴えるのは、国法よりも天子の寵愛と禁中の威を頼む態度を表し、献帝が袖で涙をぬぐう描写は、帝位にありながら困窮し屈辱を受ける状況を際立たせます 。
関連する制度的背景
吉川『三国志』には、曹操が九錫を受けるくだりで「衣服 王者ノ服。袞冕赤舄」といった礼制の説明が挿入され、袞が王者級の服制に属することが示されます 。袞龍は、こうした礼制の頂点にある服章の一部として理解できます。
史実との違い