郷兵
冒頭
郷兵(きょうへい)とは、郷里や村落など地域共同体を単位に編成され、治安維持や非常時の動員に用いられる在地の兵、すなわち地方の自衛的な武装集団です。常備軍や中央の正規軍に比べて、地縁によって集められやすく、平時は生業を持つ民が必要に応じて兵となる点に特色があります。
概要
郷兵は、賊徒や反乱の拡大、戦乱による官軍不足など、中央の統制が行き届きにくい局面で機能しやすい兵制概念です。指揮は地方官や地元の豪族・有力者に依存しやすく、武器・兵糧の調達も地域の負担や寄進に左右されました。そのため、同じ「官側の兵」に見えても、訓練度や規律、忠誠の向き先は一様ではありません。
意味
語義としては「郷」の兵であり、郷里の人々から成る兵を指します。吉川英治の三国志では、劉備らが楼桑村から涿郡の府城へ向けて出発する際、「二百余の郷兵」が随伴・動員される形で描かれ、地方官の命令のもとで地域兵が一定数まとまって行動し得ることが示されています
当時の文脈での使われ方
後漢末のように州郡の権力と在地勢力が結びつきやすい時代には、郷兵は義勇兵や私兵に近い性格へ傾く場合もあり、正規の軍制だけでは説明しきれない地方武力の実態を表す語として用いられます。
吉川三国志での扱いと史実や演義との違いとしては、作中では地方官配下の動員兵として比較的分かりやすく示される一方、史実上は地域武装の実態が多様で、用語も郡兵・州兵・私兵などと重なり合って運用され得ます。