天文
冒頭
天文(てんもん)とは、天体の運行や異象を観測し、暦や国家の吉凶判断、人物や王朝の盛衰の兆しを読み取るための学問と実務です。吉川英治『三国志』では、星や彗星などの現象が政局判断や軍事判断と結びつき、予言や占断として語られます。
概要
天文は、観測にもとづく記録と、陰陽五行・暦数などの理屈を用いた解釈が一体となって運用されます。作中では、太史令が星の交会から「新しい天子」の出現を予言し、曹操がその説の流布を警戒して口止めする場面があり、天文が政治的影響力を持つ知識であったことが示されます。
意味
天文の判断対象は、太白星や熒星などの惑星の位置・交会、北斗や将星の異変、流星や客星などの「変」を含みます。孔明が星の明暗や凶色から自身の命数を悟ると述べる例や、司馬懿が北斗の変化から孔明の死を断じる例があり、天文が個人の生死にまで結びつけられて解釈されることが分かります。
当時の文脈での使われ方
天文は君主の正統性や禅譲の議論にも持ち込まれます。献帝の周辺では、帝星の衰えなどを根拠に魏への王朝交代を迫る言説が現れ、これに対し帝は天象を「浮説」として退けています。 また将の条件として「天文に通じ」ることが挙げられ、気象や地理と合わせた総合判断の素養として位置づけられます。
関連人物
史実との違い
吉川三国志では天文が「迷信」ではなく運命観に根ざした学問として説明される一方、史実・演義でも天文観測と瑞祥・災異解釈は重視されるが、個々の占断が物語上の因果として整理される度合いは作品ごとに異なります。