洛陽
洛陽(らくよう)とは、中国の古都であり、三国志の物語にとっても重要な舞台のひとつです。
洛陽は後漢王朝の都として栄えました。後漢末期には政治の腐敗や宦官の専横、そして黄巾の乱などによって大きく動揺し、それに乗じて各地の群雄が台頭する三国時代の幕開けとなりました。洛陽はその中枢でありながら、董卓による焼き討ちや、曹操による献帝の遷都(長安への移動)など、栄華と混乱の両方を象徴する都市でもあります。
物語の冒頭で登場する「霊帝」の時代には、洛陽は豪奢な都でありましたが、やがて董卓がこの都を手中に収めると、暴虐の限りを尽くし、大火によって多くが焼け落ちてしまいます。このエピソードは三国志のドラマティックな転換点でもあり、そこから英雄たちが歴史の舞台に立っていきます。曹操や劉備、孫権といった群雄が名を連ねるなかでも、洛陽は「かつての繁栄」の象徴として何度も語られるのです。
吉川英治の三国志のなかでは、洛陽は単なる地名というより、「天下の趨勢を決する場所」「運命が大きく動く都」として描かれています。霊帝の宮廷のきらびやかさや、そこから滑り落ちる哀しみが鮮やかに描写され、読者に強い印象を残します。物語を読み進めるうえで「洛陽」という名前が出てきたときは、歴史の大きな波がこの都をいかに変動させたか、そしてそれを目の当たりにした英雄たちがどんな思いでこの都に立ったのか――そんなことも想像しながら味わってみてください。