方天戟
冒頭
概要
関連人物
歴史
董卓はなお、丁原の反対に根をもって、轅門に待ちうけて、彼を斬って捨てんと、剣を按じていた。 ところが。 最前から轅門の外に、黒馬に踏みまたがって、手に方天戟をひっさげ、しきりと帰る客を物色したり、門内をうかがったりしている風貌非凡な若者がある。 ちらと、董卓の眼にとまったので、彼は李儒を呼んで訊ねた。李は外をのぞいて、 。
「……来たな」と、北軍の呂布は、例の名馬赤兎にまたがり、虎牢関の前衛軍のうちから、悠々、寄手の備えをながめていた。 呂布、その日のいでたちは。 朱地錦の百花戦袍を着たうえに、連環の鎧を着かさね、髪は三叉に束ね、紫金冠をいただき、獅子皮の帯に弓箭をかけ、手に大きな方天戟をひっさげて、赤兎馬も小さく見えるばかり踏みまたがった容子は――寄手の大軍を圧して、 。「あれこそ、呂布か」と、眼をみはらせるばかりだった。二。
と、袁術の将星、梁紀、楽就の二騎が、土砂まじりの山肌をすべるが如く馳け下ってきて、呂布を左右から挟んで打ってかかる。「邪魔するな」 。 呂布は、馬首を高く立て楽就の駒を横へ泳がせ、画桿の方天戟をふりかぶったかと思うと、人馬もろとも、楽就は一抹の血けむりとなって後ろに仆れていた。「卑怯っ」 。 逃ぐるを追って、梁紀の背へ迫ってゆくと、横あいから、 。
行く先々の敵の囲みは、まだ分厚いものだったが、趙雲は甲の胸当の下に、三歳の子をかかえながら、悪戦苦闘、次々の線を駆け破って――敵陣の大旆を切り仆すこと二本、敵の大矛を奪うこと三条、名ある大将を斬り捨てることその数も知れず、しかも身に一矢一石をうけもせず、遂に、さしもの曠野をよぎり抜けて、まずはほっと、山間の小道までたどりついた。 するとここにも、鍾縉、鍾紳と名乗る兄弟が、ふた手に分かれて陣を布いていた。 兄の縉は、大斧をよくつかい、弟の紳は方天戟の妙手として名がある。兄弟しめし合わせて、彼...
「孔明が自ら来るとは望むところだ」 。 と、まず六万の軍を、その通路へ押し出してもみ潰さんと待ちかまえていた。 この六万の大将は鄂煥といって、面は藍墨で塗った如く、牙に似た歯を常に唇の外に露わし、怒るときは悪鬼の如く、手に方天戟を使えば、万夫不当、雲南随一という聞えのある猛将だった。 序戦第一日に、これに当ったのは、蜀の魏延であった。魏延は孔明から策を授けられていたので、いたずらに勇を用いず、もっぱら智略を以て彼を疲らせ、その第七日目の戦いに、盟軍の張翼、王平の二手と合して、猛将鄂煥をうま...