涿県
涿県(たくけん)とは、中国の河北省中南部に位置する歴史的な地名である。三国志の物語が始まる重要な舞台となった場所であり、特に劉備玄徳の出生地として有名である。劉備はこの涿県の楼桑村で代々農を営む家に生まれ、その出自には諸葛亮の後に語る「草鞋を編んで暮らす貧しい家」という言葉が象徴的に表れる。
三国時代当時の涿県は、後漢末の混乱の中で辺境とはいえ人材や志をもった人物たちが集う土地でもあった。最初に劉備と張飛、そして関羽が義兄弟の契りを交わす「桃園の誓い」もこの涿県の地で行われ、後の蜀漢建国の源流をなす場となった。
涿県はまた、その地名が登場する場面では劉備の質素と誠実な人柄、そして彼を慕う者たちとの出会いが印象深く描かれるだけでなく、歴史の大きなうねりに巻き込まれていく運命の始まりでもある。向かうはずの大業、親しい人々との出会いと別れ、そして英雄たちの運命がここから動き出す。