張宝
張宝(ちょうほう)とは、後漢末期の中国に活動した人物で、特に「黄巾の乱」の指導者のひとりとして知られている。
生涯
張宝は、張角の弟で、もうひとりの兄弟とともに後漢末期の民衆反乱「黄巾の乱」を主導した。「天地を大いに乱す」という理想を持つ張角が精神的指導者であったのに対し、張宝は実際に軍勢を率いる主力のリーダーであった。黄巾軍は急速に勢力を拡大したが、やがて各地の官軍による激しい討伐を受け、張宝もその戦いのなかで討たれている。
人物
吉川英治の三国志でも、張宝は兄張角の指導のもとで行動する忠実な弟として描かれているが、特筆すべき個性やカリスマ性は兄ほどではない。軍を率いて勇敢に戦う一方で、謀略や妖術にも長けていたと伝えられており、黄巾軍を支えた重要な一員であった。
血縁
張宝は張角の実弟であり、もう一人の兄弟である張梁とも兄弟関係にある。
関連する人物
張角──兄、黄巾の乱の精神的・宗教的指導者
張梁──もう一人の兄弟、共に黄巾軍を率いた
有名なエピソード
張宝は、黄巾軍の中で「妖術使い」として恐れられており、呪術や幻術を駆使して官軍を惑わし、士気を高めたという逸話がある。また、官軍の名将たち(例えば劉備、関羽、張飛や皇甫嵩など)との熾烈な戦いも描かれ、一般民衆の中では「悪役」としてではなく、社会の矛盾に立ち向かった一種のカリスマ的存在として記憶されている。
吉川英治の三国志と史実で違う点
史実の張宝について伝わっていることは限られており、吉川英治の三国志では、その人格や活躍、壊滅までの詳細な描写や、妖術などのエピソードが大きく脚色されている。史書ではもう少し簡単に扱われており、吉川英治による物語性強いキャラクター造形が加わっている。
張宝は三国志の時代を象徴する争乱の発端、「黄巾の乱」の中心人物として、小説の冒頭から激動の時代を切り開く存在であり、その死とともにひとつの時代の終焉も感じさせる存在である。