漢民族
冒頭
漢民族(かんみんぞく)とは、中国史上で多数派を占め、漢王朝以来の政治秩序や文字文化を担ってきた人々を指す呼称です。吉川英治『三国志』では、戦乱による人口移動や「漢」を奉戴する政治理念と結びついて用いられます。
概要
後漢末から三国時代にかけては、中原の戦禍を避けて南方へ移住する人々が増え、新しい土地で生産や社会形成を進めたと説明されます。北方から南方へ移る流民の中には、土民・奴婢だけでなく、士大夫や学者層も含まれ、定住地ごとに新たな共同体や文化が展開していったとされます。
意味
本作中の「漢民族」は、単なる血統分類というより、黄河流域を中心に培われた農耕と国家の伝統を継ぐ「漢の民」という歴史意識を含んで語られます。劉備が「漢の民を興し」「漢民族の血と平和を守る」と誓う場面では、王朝再興の大義が、民衆の安寧と同義に置かれています。
背景
南方開発の文脈では、北方の戦乱から逃れてきた漢民族が各地に分布し、江岸の荊州から益州方面にまで広がったとされ、移住が地域社会の再編を促す要因として扱われます。 また四川では、漢代初期から漢民族の流入が進み、巴蜀文化の繁栄につながったという説明が添えられます。
史実との違い
「漢民族」は近代以降に確立した民族概念で、同時代史料では通常「漢人」などの語で表される点が、用語法として異なります。