荊州
荊州(けいしゅう)とは、中国の古代行政区画のひとつであり、三国志の舞台となる重要な地域です。
荊州は、中国中南部の長江流域に広がる広大な地域で、現在の湖北省・湖南省・広東北部・江西西部などに相当します。地形としては長江が貫流し肥沃な平野が広がり、また要衝として古来より軍事的にも経済的にも価値が高く、さまざまな勢力がこの地を巡って争いました。
三国志の物語では、荊州は特に劉備・関羽・孫権・曹操といった有力人物たちが激しく奪い合ったことで有名です。最初は劉表(りゅうひょう)が治めていましたが、この劉表の死後、複雑な政変を経て劉備が一時的に支配しました。その後、劉備の義兄弟である関羽が荊州を守りますが、孫権と曹操の挟撃を受けて失陥し、関羽自身も命を落としました。この「荊州争奪戦」と「関羽の最期」は三国志の中でも屈指のドラマティックな場面です。
また、経済的にも荊州は穀倉地帯として物資が豊富でした。軍事的な要衝としてだけでなく、三国時代の勢力均衡にも大きな影響を与えた場所です。
登場人物との関係としては、劉表(荊州牧)、劉備(後に荊州を拠点とする)、関羽(荊州防衛)、孫権(南から荊州を狙う)、曹操(北から進出する)など複数の重要人物が荊州で交錯します。
史実と『吉川英治の三国志』との違いについては、物語ではドラマ性を強めるために荊州の争奪劇や人物の描写に脚色が加えられています。特に関羽の最期や、荊州奪還をめぐる策略などは小説内で重厚な人間ドラマとして展開されています。