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鵞毛の兵

一  いま漢中は掌のうちに収めたものの、曹操が本来の意慾は、多年南方に向って旺であったことはいうまでもない。  いわんや、呉といえば、あの赤壁の恨みが勃然とわいてくるにおいてはである。 「漢中の守りは、張郃、夏侯淵の両名で事...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago

一  呉の境から退いて、司馬懿が洛陽に留っているのを、時の魏人は、この時勢に閑を偸むものなりと非難していたが、ここ数日にわたってまた、 (孔明がふたたび祁山に出てきた。ために、魏の先鋒の大将は幾人も戦死した)  という情報が...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
鶏肋

一  ここまでは敗走一路をたどってきた曹操も、わが子曹彰に行き会って、その新手五万の兵を見ると、俄然、鋭気を新たにして、急にこういう軍令を宣した。 「ここに斜谷の天嶮あり、ここに北夷を平げて、勇気凜絶の新手五万あり、加うるに、わ...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago
南風北春

一 「逃がしては!」と、徐盛は、水夫や帆綱の番を励まして、 「追いつけ。孔明の舟をやるな」と、舷を叩いて励ました。  先へ舟を早めていた孔明は、ふたたび後から追いついて来る呉の船を見た。孔明は、笑っていたが、彼と船中に対坐し...

本文 三国志 赤壁の巻
約2ヶ月 ago
中原を指して

一  蜀の大軍は、沔陽(陝西省・沔県、漢中の西)まで進んで出た。ここまで来た時、 「魏は関西の精兵を以て、長安(陝西省・西安)に布陣し、大本営をそこにおいた」  という情報が的確になった。  いわゆる天下の嶮、蜀の桟道を...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
立春大吉

一  年はついに暮れてしまった。  あくれば建安十三年。  新野の居城に、歳暮や歳旦を迎えているまも、一日とて孔明を思わぬ日のない玄徳は、立春の祭事がすむと、卜者に命じて吉日をえらばせ、三日の潔斎をして身をきよめた。  ...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago

一  ――一方。  洛陽の焦土に残った諸侯たちの動静はどうかというに。  ここはまだ濛々と余燼のけむりに満ちている。  七日七夜も焼けつづけたが、なお大地は冷めなかった。  諸侯の兵は、思い思いに陣取って消火に努めて...

群星の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
総兵之印

一  蜀魏両国の消耗をよろこんで、その大戦のいよいよ長くいよいよ酷烈になるのを希っていたのは、いうまでもなく呉であった。  この時に当って、呉王孫権は、宿年の野望をついに表面にした。すなわち彼もまた、魏や蜀にならって、皇帝を僭称...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
短髪壮士

一  奪取した二ヵ所の陣地に、黄忠と魏延の二軍を入れて、涪水の線を守らせ、玄徳はひとまず涪城へかえった。  折からまた、遠くへ行った細作が帰ってきて、蜀外の異変をもたらした。 「呉の孫権が、漢中の張魯へ、謀略の密使をさし向け...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago
霧風

一  陳大夫の息子陳登は、その後も徐州にとどまって城代の車冑を補けていたが、一日、車冑の使いをうけて、何事かと登城してみると、車冑は人を払って、 「実は、曹丞相から密書をもって玄徳を殺すべしというご秘命だが、やり損じたら一大事で...

臣道の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
遺孤を託す

一  この年四月頃から蜀帝玄徳は永安宮の客地に病んで、病状日々に篤かった。 「いまは何刻か?」  枕前の燭を剪っていた寝ずの宿直や典医が、 「お目ざめでいられますか。いまは三更でございます」と、奏した。  白々と耀き...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
孫権立つ

一 「あっ、何だろう?」  宿直の人々は、びっくりした。真夜半である。燭が白々と、もう四更に近い頃。  寝殿の帳裡ふかく、突然、孫策の声らしく、つづけさまに絶叫がもれた。すさまじい物音もする。 「何事?」と、典医や武士も...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
成都陥落

一  馬超は弱い。決して強いばかりの人間ではなかった。理に弱い。情にも弱い。  李恢はなお説いた。 「玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。こういう公明な主をえらぶに、何でうし...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago
宝剣

一  曹仁の旗下で、淳于導という猛将があった。  この日、玄徳を追撃する途中、行く手に立ちふさがった糜竺と戦い、遂に糜竺を手捕りにして、自身の鞍わきに縛りつけると、 「きょう第一の殊勲は、玄徳をからめ捕ることにあるぞ。玄徳と...

本文 三国志 赤壁の巻
約2ヶ月 ago
洛陽

洛陽(らくよう)とは、中国の古都であり、三国志の物語にとっても重要な舞台のひとつです。 洛陽は後漢王朝の都として栄えました。後漢末期には政治の腐敗や宦官の専横、そして黄巾の乱などによって大きく動揺し、それに乗じて各地の群雄が台頭する...

地名 三国志
約2ヶ月 ago
関平

一  樊城の包囲は完成した。水も漏らさぬ布陣である。関羽はその中軍に坐し、夜中ひんぴんと報じてくる注進を聞いていた。  曰く、  魏の援軍数万騎と。  曰く、  大将于禁、副将龐徳、さらに魏王直属の七手組七人の大将も...

本文 三国志 遠南の巻
約2ヶ月 ago
死せる孔明、生ける仲達を走らす

一  一夜、司馬懿は、天文を観て、愕然とし、また歓喜してさけんだ。 「――孔明は死んだ!」  彼はすぐ左右の将にも、ふたりの息子にも、昂奮して語った。 「いま、北斗を見るに、大なる一星は、昏々と光をかくし、七星の座は崩れ...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
北斗七星旗

一  青貝の粉を刷いたような星は満天にまたたいていたが、十方の闇は果てなく広く、果てなく濃かった。陰々たる微風は面を撫で、夜気はひややかに骨に沁む。 「なるほど、妖気が吹いてくる――」  仲達は眸をこらして遠くを望み見ていた...

五丈原の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
不倶戴天

一  このとき丞相府には、荊州方面から重大な情報が入っていた。 「荊州の玄徳は、いよいよ蜀に攻め入りそうです。目下、彼の地では活溌な準備が公然と行われている」  曹操はかく聞いて胸をいためた。もし玄徳が蜀に入ったら、淵の龍が...

本文 望蜀の巻 三国志
約2ヶ月 ago
白羽扇

一  荊州、襄陽、南郡三ヵ所の城を一挙に収めて、一躍、持たぬ国から持てる国へと、その面目を一新しかけてきた機運を迎えて、玄徳は、 「ここでよい気になってはならぬ――」と、大いに自分を慎んだ。 「亮先生」 「何ですか」 ...

本文 望蜀の巻 三国志
約2ヶ月 ago
建業会議

一  手術をおえて退がると、華陀はあらためて、次の日、関羽の容体を見舞いにきた。 「将軍。昨夜は如何でした」 「いや、ゆうべは熟睡した。今朝さめてみれば、痛みも忘れておる。御身は実に天下の名医だ」 「いや、てまえも随分今...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
邯鄲

一  冬十月の風とともに、 「曹操来る。曹軍来る」の声は、西平のほうから枯野を掃いて聞えてきた。  袁尚は愕いて、にわかに平原の囲みをとき、木の葉の如く鄴城へ退却しだした。  袁譚は城を出て、その後備えを追撃した。そして...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
南方指掌図

一  益州の平定によって、蜀蛮の境をみだしていた諸郡の不良太守も、ここにまったくその跡を絶った。  従って、孔明の来るまで、叛賊の中に孤立していた永昌郡の囲みも、自ら解けて、太守王伉は、 「冬将軍が去って、久しぶりに春の天日...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
戦車と地雷

一  この日は、藤甲兵の全軍に、兀突骨もみずから指揮に立って、江を渡ってきた。  蜀兵は、抗戦に努めると見せかけながら、次第に崩れ立ち、やがて算をみだして、旗、得物、盔を打ち捨て、われがちに退却した。  そして、一竿の白旗が...

出師の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago
諸葛氏一家

一  孔明の家、諸葛氏の子弟や一族は、のちに三国の蜀、呉、魏――それぞれの国にわかれて、おのおの重要な地位をしめ、また時代の一方をうごかしている関係上、ここでまず諸葛家の人々と、孔明そのものの為人を知っておくのも、決してむだではなか...

孔明の巻 本文 三国志
約2ヶ月 ago